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2021年4月27日

Guardian's 1000 (25)

さくさく進む読書。COVID19のせいで外出が減っているせいもあるが、実は体調も優れなくてお散歩もままならないため、読書が進んでいるのだった。どこまでいけるか Guardian’s 1000。でも250までは来たぞ。Crimeカテゴリは60%突破。

(241) 静かなる天使の叫び(R・J・エロリー/集英社文庫):
少女を狙った連続バラバラ殺人。犯人から女の子達を守ろうと少年たちはガーディアンを結成するが、個人的に守ってあげると約束した隣家の少女は放火により焼死してしまう。隣家の主人と不倫していたママは精神不安定になる。女性教師アレックスの励ましで立ち直りかけるけど、妊娠して結婚を約束したのに階段から落ちて母子ともに死んでしまう。傷心のジョゼフはNYに出て作家修行。図書館で出会ったブリジットはアレックスの面影。放火したのは私とママに打ち明けられて落ち込むも、ブリジットのおかげでやっと幸せに・・・と思いきや、ブリジットは連続殺人犯に殺され、ジョゼフが犯人として逮捕され、裁判の結果有罪となってしまう。でも友達や編集者が力になってくれて獄中で書いた手記が話題作となり、再審も通って無罪放免となる。ずっと事件を追い続けていた(ジョゼフ投獄中も事件は続いていた)保安官に再会し、そして・・・伏線はしっかり張ってあったのに全然わからなかった!推理小説としても上手いし、成長物語としても読める。どこまでも暗いけど一応最後は解決するし。

(242) 殺意(フランシス・アイルズ/創元推理文庫):
チョコレート事件と同じ人の別筆名作品。主人公が犯罪を語る、推理の余地がないタイプ。惚れっぽいビクリー医師は近所に越してきた若い女性マドレインに魅せられ、口うるさい妻の殺害を計画する。頭痛を起こす薬を飲ませて、頭痛を抑えるためのモルヒネを注射し、だんだんにこっそり自己注射する程の中毒にして、最後は過量投与。でもマドレインを口説いてたのを村のみんなが知っていたので、なんか怪しい、事故ではなくて自殺或いは毒殺ではないかと噂されてしまう。肝心のマドレインは他の男性と結婚。くやしー。前の浮気相手のアイヴィが魅力的に見えてきて、アイヴィの亭主とマドレインを一気に殺すために、腸詰菌(ボツリヌス菌)を培養して塗りつけたサンドイッチをランチ会に提供。食べた二人は目論見通り病気になる、が、死なない。でも警察がやってきて細菌培養器を見つけて逮捕されてしまう。もうだめかと思ったのに、警察が疑っていたのは、妻のヒ素による毒殺+二人の細菌による毒殺。しかし二人の病状はボツリヌス菌ではなく、亡妻の遺体を解剖してもヒ素は出てこない。無罪放免でラッキー!と思いきや、殺すつもりもなかったマドレインの亭主が腸チフスで死んだため、その殺人容疑で有罪になってしまう。えーっ。彼の食べたサンドイッチには細菌を塗りつけてないのに―!

(243) 緑衣の女(アーナルデュル・インドリダソン/創元推理文庫):
舞台はアイスランドのレイキャビク。今のように裕福ではなかった時代、ちょっとのことが生死を分ける厳しい冬。子供時代のトラウマを抱える大人たちと、その親の元で育つ子供たち。廃屋の解体現場で見つかった古い遺体は誰のもの?概ね想像はつくけど。DVの描写が正確でつらい。障害をもつミッケリーナが魅力的で救い。刑事の娘さんも回復するようだし、最後に小さく希望があるのがAJ好みだな。邦題はオリジナル(アイスランド語)から。英語題名の方が雰囲気あるけどね。

(244) 死の味(P・D・ジェイムス/ハヤカワミステリ):
教会の聖具室で浮浪者と共に死んでいた引退したばかりの政治家。自殺なのか他殺なのか?多くの関係者がそれぞれの理由で嘘をつく/隠し事をするので、捜査がなかなか前に進まない。ダルグリッシュ刑事カッコイイが部下のケイトがかっこいい!推理小説としても面白いし、イギリスっぽい。うっかり泊まってみた教会で聖痕が付いたら人生って変わるんだろうか。置いてきぼりのキャサリンがちょっとかわいそう。

(245) トゥモロー・ワールド(P・D・ジェイムス/ハヤカワミステリ):
作者同じでもSFカテゴリから。1992年に、2021年(今年だよ!)を舞台に書かれた近未来ディストピア。世界中で新たに子供が生まれないという設定。人類の終末としては、核戦争とか病原菌とかよりも悪くないのかもしれないけど・・・微妙。今書けば人手不足はロボットがだいぶカバーすると思うが、そういう不便はなくなっても、将来がないあてどなさはまた別のものだよな。科学という神に見放された(産まれない理由が不明で打つ手がない)状態もキツイと思う。嘆く旧世代としらけるオメガ世代。そんな中で新たなアルファが誕生する。これは希望なのか?希望かもしれないのに読後感が暗いのは、ありそうな気がしてしまうからなんだろうなぁ。

(246) 金曜日、ラビは寝坊した(ハリイ・ケメルマン/ハヤカワポケミス):
アメリカのちょい田舎、新任のラビは若いし学究肌で、信徒(一応)の問題も解決したりする優秀な男なのだが、ラビっぽくなくてイヤと思う人も多い。そんな中でうっかり寝坊して祈祷会をパスしたラビの車の中で若い女性の死体が発見される。容疑者はラビの他に二人。どちらもそれなりに怪しいのだが、死体の状況を今一つ説明できない。最後にラビが真犯人を上げると、あーそういえばちゃんと伏線が張られてたよ!全然気が付かなかった!推理小説としても上手いし、登場人物たち(真犯人除く)も魅力的で読んでいて楽しい。

(247) キム(キプリング/光文社古典新訳):
これはスパイものという分類でCrimeに入ったのかなぁ。TravelかSelfに入れるべきな気がする。アイルランド人の父を持つインド生まれのやんちゃな少年キムはラホールの「みんなの友」。ある日博物館の前で老僧に出会う。チベットから、罪業を洗い流す聖なる矢の川を探している老僧にお供することになる。お坊さんと腕白者の組み合わせは西遊記みたいだけど、このお坊さんは老僧だし、腕白少年は旅を通じて精神的にも知識的にも成長していく。導き手の一人はもちろん老僧なんだけど、キムの才能を見抜いたイギリス諜報機関の皆さんがいろいろバックアップしてくれる。旅を通じていろんな人に出会い、(イギリス人から見た)インドの他民族ぶりがうまく描かれている。山地を歩いて元気になる老僧は、しかし捨てた筈の怒りや復讐の衝動も取り戻してしまい落ち込む。でも旅の最後に病気になったキムを気遣う間に、キムを思うことで川を見つける。川を見つけたことでキムを救うことになる。幸せな老僧。元気が戻ったキムも願いが叶った老僧を見て幸せなハッピーエンド。こういうの好き。

(248) ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ(ジョン・ル・カレ/ハヤカワNV):英国の諜報機関に敵国ソ連のスパイが潜り込んでいるらしい。容疑者は4人。内部調査は難しいので、既に組織を離れたジョージ・スマイリーに捜査が任される。なんかゴロの良い題名は童謡からの借用。Tinker, Tailor, Soldier, Poorman, Beggerman。疑わしい5人に付けられた仮名。スマイリーはかつて容疑者の一人でベガーマンだった。題名からすると、Poorman=スパイなの?と思ってしまったが違うんだよ。偉大な二重スパイは捕まえてみるとただの男。諦観漂う描写がそうなんだろうなーと思える。いろんな人物が登場して、それぞれ良く書けていて面白いしうまい。「寒い国」よりこっちの方が好き。

(249) アラバマ物語(ハーパー・リー/暮らしの手帖社):
子供の頃から暮らしの手帖を読んでたので、実はこの本の存在は広告で知っていたのだ。でも、原題のTo Kill a Mockingbird がアラバマ物語とは思わなかったし、わかっても出版社を検索するまであの本だとは思わなかった。えー?あれって推理小説の類だったの??と思ったけどやっぱり違うな。Nation枠で扱うべきじゃないか。ま、犯罪は起きてるんだけどさ。アラバマの田舎町で、貧乏弁護士の父と4つ上の兄と暮らすスカウトはお転婆娘。町には黒人と貧乏白人が多くて、裕福白人はあまり出てこない。ある日婦女暴行の罪で黒人が訴えられ、父が弁護することに。黒人を弁護するなんて!と白眼視される一家。でも裁判所に行ってみたら、被告人のトムは片腕しかなく、被害者(白人の独身女性)を殴ったり首を絞めたりして強姦するのは難しく、むしろ被害者が被告人を誘惑してるところに激怒した被害者の父親が殴ったのでは?状況証拠は揃ってるのに陪審員判決は有罪。やっぱりみんな黒人がキライで信用できないらしい。原告の父は勝訴しても怒っていて、被告は勿論、弁護士も裁判長も殺してやる!と息巻く。口だけだろと思ったのに、学芸会の帰り道、豚の恰好でとぼとぼ歩いていたスカウトと兄を襲い、偶然か反撃か、とにかく犯人は死んでしまって一件落着。希望があるかどうかは微妙だが、BLMを気にする白人も昔から少数はいるのよ、という話ではある。

(250) マザーレス・ブルックリン(ジョナサン・レセム/ミステリアスプレス文庫):
NYの孤児達は孤児院を出てもフツーの生活には遠い。チンピラのフランク・ミナが孤児達をスカウトしてミナ・ファミリーを結成して、ちょい仕事、時々ヤバい請負をやる。今でいうと受け子?依頼人はイタリア系マフィアらしい。前は一緒に仕事をしていたフランクの兄はいなくなってしまう。そんなある日、誰かから呼び出しを受けたフランクは、見張りに子分を二人連れて出向くが、あっさりやられてしまう。主人公のライオネルは、トゥレット症候群(チック症の重症版)のため、疎まれやすいけど、フランクは面白がって仲間に入れてくれた。だからフランクの敵を討つために調査を開始する。奇矯な言動→意思疎通出来ない→バカ、と思いがちだけど、ライオネルはバカではない(天才探偵ではないし、利口な人なら調査なんかしない、って話はあるけど)。一人称で語られるので、自分の症状を理解し、コントロールしようと努力する様子がわかり、はーそうなんだ、脳って厄介だなと思った。推理小説としても面白いけど、ライオネルがとても魅力的だし、NYもらしく描かれていると思う。ただし日本人ヤクザ?についてはどーかなー。

2021年4月20日

パート リーブル

パートショソンの一つ前の項目として出て来るパートリーブル。『これは上のように本の形をしたものです』。フランス語で本は"livre"。パートショソンと同じで本来は「パート」は要らないんだと思う。が、自信なし。だって、ショソンの時はGoogle先生がいろいろ示唆してくれたんだけど、「パイのリブレ」とか「お菓子のリブレ」とか検索しても、料理本が山のように出てきてしまい、「本の形のお菓子」にたどり着けないのでした、涙。

仕方ないのでそれっぽく自分で焼いてみた。 概ねこんな感じ。『焼き上った時に、層が本の頁のように軽く一枚一枚めくれる感じに焼き上ればよいのです。』

うーむ、私の卵液のかけ方が悪かったせいか、うまくめくれていないぞ。困ったな。ウロウロした挙句見つけたのが、リトルマーメイドのアップルパイ。上に切り込みが入っているのが余計だけど、概ねこんな感じ。

・・・今度は写真の撮り方が悪くて、めくれ加減がわかんないな(涙)。ま、とにかく長方形のパイ生地を半分位に折り畳んだもので、パイというかデニッシュに限りなく近いもの。リトルマーメイドのは、ちょうど半分で折り畳んでしまっているが、お手本は6対4で折り畳むことになっていて、その点ではAJ製の方が近い。そんなようなものってことで(苦笑)。中にはジャムやクリームを入れる。お手本写真では更に上にバタークリームでデコレーションしている。どっちにしてもデニッシュにしか見えない。

2021年4月17日

クリーム湯

 「のみもの」カテゴリーには書くほどじゃないお馴染みのものが多いんだけど、謎の飲み物も一つ。それが「クリーム湯」。こんな感じの飲み物。

名前から、生クリーム風の白くて甘い飲み物を想像したんだけど、材料は牛乳、砂糖、コーンスターチ、玉子とバニラエッセンス。つまりクリームはクリームでもカスタードクリームなのだ。カスタードクリームがドロドロでアツアツで激甘。

好きな人は好きな味かもしれないが、ドロドロが苦手な私にはちょっと。クリームは冷たい方が美味しいと思う。トロトロ程度のカスタードソースならまだいいんだけど、ぶつぶつ。

グリーン ティー

 「家庭でできる和洋菓子」には「のみもの」というカテゴリーもあって、コーヒー・紅茶・ココア・お茶(煎茶・番茶・玉露)の淹れ方とか書いてある。ここまでは別に解説するまでもないんだけど、「お茶」とは別項目になっている「グリーンティー」とは何か?

現在の標準的感覚では、普通のお茶(煎茶)と一緒か、或いはペットボトル入りのお茶?と思ってしまうのだが、レシピはこんな感じ。『挽茶と砂糖をよくまぜ合わせておき、この中に温めた牛乳を少しずつ入れながら、泡立て器でかたまりのないようにかきまぜます』。

えーっ!それは「抹茶ミルク」なんですけど。抹茶ミルクを「グリーンティー」と言ってしまったら、普通のお茶を英語で説明できなくなっちゃうじゃないかー!!

2021年4月11日

ハヤカワepi文庫シリーズ (6)

(8) 生は彼方に(ミラン・クンデラ):
共産党政府が出来ようとする頃のチェコ・プラハ。ママに溺愛されるヤロミールは絵や小説、詩に興味を持つ少年。初恋はなかなかうまくいかないが、憧れていた女性の同僚のリードで初体験。そのまま恋に夢中になるが、よく考えると美人でもグラマーでも知的でも上品でもない。更にもしかしたら尻軽女かも、嫉妬から暴君になっていく。革命政府を支持する一方、芸術は芸術なんて余計なことを言ったりもする。国外逃亡する兄を見送りに行くという彼女を警察に売り飛ばす(ホントは嘘だったのだが政府はそうは思わない)。革命派の芸術者集団の仲間入りが出来ると思ったのに、余計なことを言ってバルコニーに追い出され、寒さの中肺炎になりあっさり死んでしまうのだった。自伝的小説なんだそうな。その頃のチェコが良く描かれているんだろう。チェコはロシアとは違うが、オーストリアともやっぱり違う感じ。

(40) バルザックと中国の小さなお針子(ダイ・シージエ):
文化大革命下の中国。自伝的作品。医師の両親をもつ主人公は、有名歯医者の父を持つ親友のラオと一緒に地方に「下放」される。近所には作家の母を持つメガネもいる。虐められるメガネが親のコネ+金で下放生活から抜け出す時に、隠し持っていた禁書入りトランクを盗んで来るふたり。バルザック始めたくさんのフランス文学を読みふける。近くに住む仕立て屋の娘に好意を持つが、積極派のラオが恋人にするのを指をくわえてみてるだけ。ラオはフランス文学を娘(小裁縫=小さいお針子)に読んでやり、教養をつけようとする。ラオの留守中に妊娠がわかり、僕は病院に行って、翻訳本を代金代りに堕胎を手配してやる。街に出てお洒落に興味を持ち、自分で縫った服で着飾って見違えるほどきれいになった小裁縫。教育の効果があったぜ、と喜んでいる少年たちを尻目に、ひとり村を出て都会に向かうのだった。ここにも若い女あるある。

(74) 素数たちの孤独(パオロ・ジョルダーノ):
初めて読むジョルダーノ。これ好き。アリーチェとマッティア。子供の頃の辛い思い出と物理的に負っている傷。一般的な恋愛とは違うけど惹かれ合う二人。久しぶりに再会して、自分にはこの人しかいないという確信と同時に、でも相手は自分を必要としていないというはっきりした思い。「双子の素数」の近さと遠さ。身にしみて切ない。

(76) 虹をつかむ男(ジェイムス・サーバー):
光文社古典でも短編集を読んだ。同じ作品も結構入っている。印象も同じでニューヨーカーらしい軽い読み物。日本だと機内誌な感じ。

(92) 後継者たち(ウィリアム・ゴールディング):
ネアンデルタール人vs後継者ホモサピエンスの話だとわかるのは、前書きというか冒頭にウェルズのネアンデルタール人観が引用されているから。当時はネアンデルタール人はあらゆる意味で劣っていたから負けたと思われていたけど、著者はそうは思わなかったわけだ。心意気や良し。でも何だか純真無垢だけど愚鈍で遅れてる感じに描かれている気がするし、これはこれで差別のような。まぁ常識は時代によるので仕方ないんだけど。面白いのは、原始人の気持ちになって書かれていること。言葉はあっても文字がないと伝わる内容は限られるんだな。その辺を頭に入れて書かれているのは実験的というかイイと思う。

(90) 蠅の王、(45-48) エデンの東、(80-81) 怒りの葡萄 はGuardian’sで済。

2021年4月4日

待ってるよ!ミルクパイナップル!!

中国が、台湾からのパイナップル輸入を制限することになって、台湾ではパイナップル応援が始まっているというニュースを読んだのは2月のこと。中国の分を日本に売ってー!!と思ったのは私だけではなかったようで、ネットによると入荷するそばから売り切れているらしい。美味しいからなー、台湾のパイナップル。

でも私の食べたいのは、ただの台湾パインじゃなくて、「台湾のミルクパイナップル」なんだよう。台南に行った時に食べて、めちゃくちゃ美味しかったんだよう。だいぶ探したけど日本には来てないようだった。この機に是非是非輸入してください!フィリピンパインより高くても買うよう!とても高いようなら丸じゃなくてスライスにして売って欲しいです。本当に美味しいんだよう。これからが果物シーズンの筈、首を長くして待ってますので、何卒よろしくお願い申し上げます!!

タンバリン ケーキ

検索してもさっぱり出てこない幻のケーキ?名前はともかく、こういうケーキ自体をあまり見ない気がする。「丸いスポンジケーキの中に、生クリームのたっぷり入ったオレンジババロアがのぞいている、見た目にも変わった美しい、おいしいお菓子です」とのこと。たぶん見た目がタンバリンに似てるので付けた名前なんだと思う。

まずスポンジケーキを焼いて、底を2cm残してくり抜く。別に缶詰のミカン (オレンジババロアと書いてあるけど使うのはミカン)でババロアを作り、スポンジの穴部分に入れたら、周りを残ったクリームとミカンで飾る。スポンジもババロアも単独で食べられるのに、なんて面倒なんだ!お店に売っていないようなので、ぶつぶつ言いながらそれらしいものを作ってみました。

私にしては割と再現度が高いものが出来たぞ、えへん。本に書いてある面倒なものを私が作るはずはなく、スポンジケーキは出来合い(お誂えに穴が開いている、山パンのシフォンケーキを利用)、ババロアはフルーチェのマンゴー味。ホイップクリームも出来合いを買ってきて、ミカンの缶詰と一緒に並べただけ。 「口金を使って楽しく飾ることを工夫して下さいませ」と書いてあるのに、真っすぐ絞るだけのこともできない、どこまでも不器用な私(涙)。

2021年3月25日

Guardian's 1000 (24)

今回はCrimeカテゴリーが9冊。これでCrimeカテゴリーは、未訳含めた全147タイトル中80冊まで終了、”H”まで来た。夏までには1回終わるかな?まぁ全体から見ると1/4まで来てないんだけど。

(231) アメリカの悲劇(ドライサー/集英社):
布教活動に身を捧げるも報われない一家。長男のクライドはホテルのベルボーイとして働く中でお金持ちの生活を垣間見る。でも友達が運転する車で事故を起こして慌てて逃亡。偽名でまたホテルで働いている時に金持ちの叔父さんを見掛けて、その工場で働くようになる。従兄弟とよく似ているからと少しの尊敬を得るクライド。でも叔父さん一家は家族扱いしてくれるわけじゃない。前に比べれば良い生活だけど、叔父さんやその周りの上流社会に比べると話にならない。ついつい部下の女工ロバータに手を付けてしまう。ところが手の届かない筈の超上流社会の美しいお嬢様ソンドラの歓心を買うことができ、もしかしたら自分もあの世界に入れるかも!と思ったところでロバータが妊娠、結婚を迫られてしまう。とりあえずの中絶させたくてもお金もないしツテもない。困った挙句にうっかりロバータを殺してしまい。平等に見えるけど、そうでもないアメリカの悲劇。もちろん貧しくても人一倍の努力でアメリカンドリームという話はあるし、貧しいながらも幸せな生活はある。だけど金持ちの子女は特に努力しなくても、良い生活を手に入れられることも事実なんだよなー。金さえあれば幸せというわけではないが、でもねぇ。長い割に全く救いのない話。

(232)シスター・キャリー(ドライサー/岩波文庫):
2冊目のドライサーはStateカテゴリー。テーマは「アメリカの悲劇」に似てるのだが、都会が描かれてるからな。シカゴもNYもとてもそれっぽい。「シスター」は修道女ではなく妹の意味らしい。普通にカワイイ女の子が姉を頼って上京し、男性にちやほやされながら都会生活にどっぷり浸かっていく話。最初の男ドルーエは親切でいいやつなのだが、結婚する気はない。将来が不安になったあたりで、有名店支配人ハーストウッドから横恋慕されてしまう。熱心に口説く年上の紳士に惹かれるキャリー。結婚まで約束してくれるが実は妻子持ち。でも本気のハーストウッドは出来心で店の金を持ち出し、ドルーエが事故で入院したと嘘までついてキャリーを連れてNYへ高飛び!再就職も出来ずジリ貧に。生活費のために女優としてバイトを始めたキャリーはとんとん拍子に出世してヒモ化したハーストウッドを捨てる。結果的に利用されただけの男二人がストーカーに走らない所は好感が持てる。さほど悪気はないのだがなぁ、若い女あるある。

(233) アマ―ロ神父の罪(エッサ・デ・ケイロース/彩流社):
crime=犯罪=殺人事件を思い浮かべるが、これは単なる罪、だな。舞台は19世紀ポルトガルの地方都市。新たに着任したアマ―ロ神父は美青年。神職は自分の希望ではなく、妻帯できない自分にイライラ。下宿先は先輩神父の愛人(未亡人)の家で、魅力的な娘アマリアは小役人と結婚予定だが、ボクに気があるみたい?気づいた小役人が神父たちを中傷する(事実だけど)匿名の投書を新聞に掲載して下宿を追い出されるアマ―ロだが、当初主がバレて反撃に転じる。そしてアマリアを我が物に。落としたあとはすっかり独善的になり逢瀬を重ねるうちにアマリアは妊娠してしまう。田舎町で出産させて子供は養子に出してしまう完璧な計画を立てるのだが、産後のアマリアは死んじゃうし、子供も死んだと言われる。失意のアマ―ロは転勤を願い出るが・・あまり懲りてないかも?神父に身も心も捧げてしまう哀れなアマリア。こういうことはどこでもたくさんあったのだろうな。

(234) アメリカン・サイコ(ブレット・イーストン・エリス/角川書店):
epi文庫の「レスザンゼロ」に続いて2冊目のエリス。ウォール街の若きエリートパトリックは実は猟奇殺人鬼。エログロな描写が多いのに辟易するが、あまりに罪の意識がないし、しかも捕まる気配もない。実は妄想だったりする?と思いながら読んだ。80年代の終わりごろのNYが舞台。ブランド名が溢れるファッションやレストランの描写はバブル期を彷彿とさせる。あの頃日本でもDCブランド熱がすごかったんだよな。天邪鬼なAJは通り過ぎたつもりだけど、でもブランドイメージはわかるからやっぱり影響を受けてたんだな。スシ始め日本文化や製品が流行の最先端ででもこっそりバカにされている。あの頃スシバーなんてものも逆輸入されてたよなー。ドラッグを除けば当時の日本もこんな風に率直な物欲の虜だったと思う。

(235) ファーザーランド(ロバート・ハリス/文春文庫):
ナチス政権下の刑事マルヒが党幹部の自殺とみられる死体の調査を行うが。年代が?と思ったらドイツが第二次世界大戦に勝利したIFの世界の話だった。情報統制は厳しく支配した欧州でのテロは続いているが報道されていない。アメリカはドイツと手を組みロシアに敵対。自殺?事件はゲシュタポに取り上げられるがでもこっそり捜査を続ける内に別の幹部も自殺。なんか変。隠されているのは何?ゲシュタポと警察の派閥争い。出て来たのはユダヤ人虐殺事件なのだった。アメリカ人女性ジャーナリストのシャーリーが強くてカッコイイ。恋仲になってしまう。秘密を持って高跳びしろと警察幹部に励まされるが、罠に気づいたマルヒは証拠を託したシャーリーを守るために身を挺するのだった。推理小説としてはイマイチだが、事実ベースに歴史のIFを乗っけて作る趣向は面白いと思う。

(236) ブラック・サンデー(トマス・ハリス/新潮文庫):
パレスチナテロリストがアメリカのライスボウル会場で大量殺人を計画する。実行犯はアメリカ一般人の天才技術者。イスラエルの諜報員カボコフが八面六臂の活躍でテロリストを倒していくんだけど、FBI同僚や元海軍の一般市民も一緒に闘って、アメリカ人が書いてるなーて感じ。あまり感心しない。

(237) レッド・ドラゴン(トマス・ハリス/ハヤカワNV):
ハンニバル・レクター博士のデビュー作だった。レクターあまり活躍しない。「羊たちの沈黙」が選ばれそうなものだけど読み物としてはこちらの方が良いということなのかなぁ。読み心地が良いとは言えないが、そんなに怖くはなかった。グロいけど。でも気になって最後まで一気読みする程度には怖かった。

(238) 殺意のシーズン(カール・ハイアセン/扶桑社ミステリー):
南フロリダの観光客を狙うテロリストグループは、フロリダから金持ち達を追い出し、元の姿を取り戻したい。犠牲者をワニに食わせたり、手紙爆弾を仕掛けたり、残酷なんだけど間の抜けた失敗もある。記者の手違いで「12月の夜」のnochesがnachosになってみんなにナチョスと呼ばれてしまったり。お祭りクイーンのカーラ・リンがいわゆる単なる美女でないのもカッコイイが、敵か味方か最後までわからない、運命の女ジェンナが魅力的。観光シーズンのフロリダは知らないけど、よく描けているんだと思う。楽しくてエンタメ小説の鑑。

(239) スミラの雪の感覚(ペーター・ホゥ/新潮社):
デンマーク発ハードボイルド。人ががんがん死ぬ。グリーンランド原住民の母とコペンハーゲンの有名医師の間に生まれた科学者スミラ。滅茶苦茶タフでかっこいい!近所の子供の事故死?を調べる内に過去にグリーンランドで起きた謎にたどり着いてしまう。子供時代をグリーンランドで過ごしたスミラは氷や雪など自然現象に鋭敏。グリーンランドでは氷にたくさんの名前がある!感動的な風景なんだろうけど寒そうだし暗そう。行きたい気はしない。グリーンランドってデンマーク領なのね。意外。お金と名声のために世界を危険に陥れることもいとわない「現代人」と「原住民」な生き方の対比。どっちが正しいとかイイとかではないけど、少なくとも都会生活礼賛は避けたいと思う今日この頃。

(240) 追われる男(ジェフリー・ハウスホールド/創元推理文庫):
要人の暗殺未遂犯として殺されそうになる男。誰を何故殺そうとしたのかも、本人が誰なのかも明かされないまま話が進む。人品卑しからぬイギリス人らしいのだが、なんとか逃げ出して英国に戻っても組織に追われる。英国に迷惑をかけまいと、当局の庇護は求めず、ひたすら逃げる。孤独なサバイバル。作りとしては面白いと思うけど、主人公が不死身過ぎるのと、暗殺の動機が殺された恋人の復讐、ってのが唐突な感じ。要人=ヒトラーなのだそうだが、後書き読まないとわかんないよ!イギリスとイギリス人は良く描けていると思う。水泳中の男4人からズボンを失敬するなら4人分全部!というのは説得力あるなー。

2021年3月22日

みつ豆

 みつ豆は以前「今週の和菓子」で取り上げたのだが、「家庭でできる和洋菓子」としては書いてないことに今更気づいた。

「家庭でできる和洋菓子」のみつ豆は、えんどう豆(赤えんどう豆とは書いてない。言わなくてもわかると思っているようだが、外国人には通じないのでちゃんと書くべきだと思う)と寒天、紅白の求肥の他に、干あんずが入っている。そういえば老舗系のみつ豆には入っている気がする。写真(梅園のお土産用あんみつ)にも入っている。わかりにくいけど写真の上(奥)側にあるのがそうですね。「家庭でできる和洋菓子」のは、フルーツは干あんずだけらしい。白黒写真では缶詰ミカンに見えたのだがこれはあんずだったんだな。

今書いていて気付いたけど、「正しいみつ豆」はあんずだけで、黄桃だのミカンだのサクランボだのが入るのは「フルーツみつ豆」と呼ぶべきなのかもしれない。すると私は「正しいみつ豆」を食べたことないぞ、ぶつぶつ。

2021年3月19日

水ようかん

食品成分表では容器入りや缶入りの写真を使ったので、「家庭でできる和洋菓子」の写真とはだいぶ違う。家庭でできたわけじゃなく買って来たものだけど、それっぽい写真が用意できました。

本体だけでみると普通の羊羹と区別がつかないけど、緑の飾りが付いてくるのがお約束。『桜の葉か小笹をそえて盛りつけます』と「家庭でできる和洋菓子」には、書いてある。お手本写真は笹、右写真は桜の葉っぱです。

東京の和菓子屋さんに売っているのはこんな感じだし、夏のお菓子のイメージだけど、元来は冬のお菓子(冷蔵庫のない時代、夏は無理だった)で、福井県では今でも冬に「水ようかん始めました」と店先に広告が出るのだそうだ。福井県は行ったことないけど、福井の水ようかんは、成城石井で買ったことある。薄い箱に入っていて、付属のヘラですくって食べた。本場でも食べてみたいなぁ。

カステラ プディング

 パンで作るパンプディングの方が一般的な気がするし、「家庭でできる和洋菓子」でも『これはカステラでなく、パンでこしらえてもよいのです』と書いてある。でも項目名に従ってカステラで作ってみました。

カステラを小さく切って、レーズンと一緒にプリン型に入れて、カスタード液を入れたら蒸すだけ。カスタードプリンと違って、すが立たない(立ってもわからない)のがお手軽ポイント。

レーズンがみんな沈んじゃったし、型から抜くのも下手でボロボロ。でもまぁこんな感じのものってことで(涙)。カステラってあまり余らないと思うし、甘々になるので、硬くなってきたパンで作るのが正解の気がする。どこかレストラン?でフランスパンで作ったのを食べたことがあるけど美味しかったな。もちろん、上手い人が作れば、カステラでももっと美味しくて見た目も美しいものが出来るんだろうけど。ぶつぶつ。

2021年3月12日

ハヤカepi文庫シリーズ (5)

週に1冊くらいの割で全体の6割くらいは読み終えたが、読まなくていい率が高くなってきた気がする今日この頃。

(9) ワイズ・チルドレン(アンジェラ・カーター):
ロンドンに住む双子の老姉妹は、伝説的イケメン舞台俳優の私生児で元ダンサー。75歳の今でも素敵な脚の持ち主。今でも乙女心は持っているけど波乱の人生を通じて、賢い子供たちになったところ?顔や声は良くても頭や心はどうだか?のパパ、優しいけど理解不能の行動派の叔父、二人を巡る女性たちや子供たち、その恋人たち。二人を育てたグランマもカッコイイが、パパの最初の妻レディ・Aがイギリスっぽくていいな。そこの家のナニーもイギリスぽい。家柄の差ってハッキリとあるようで、案外曖昧だったりするんだな、と納得。

(19) カメレオンのための音楽(トルーマン・カポーティ):
カポーティの3冊はノンフィクション・ノヴェルというのだそうだ。自分の経験をベースにした短編集。私小説というには全然ドロドロしてない(私小説=ドロドロって誰が決めたんだ)。いろいろあってもどこかお洒落な仕上がり。有名人の話も多い。良く描かれてることはいいけど、そうじゃないやつは実名じゃなくても本人から怒られそうだよな。訳は野坂昭如!ちゃんとNYぽく特に問題なく読めるが、村上春樹訳ならまた印象が変わるのかもしれないね。

(36) 犬は吠えるⅠ(トルーマン・カポーティ):
「ローカルカラー」はいろんな都市での出来事。題名が街になっているやつはとくにそれっぽい。パリのコレット宅を訪ねた「白バラ」は、バカラの文鎮をもらってコレクターになってしまう話。『自分でも大切にしているものでなければ贈り物としてさしあげたってしかたないでしょう?』コレットかっこいい!「ローラ」はシチリアが舞台。貧しい家主の娘がクリスマスにくれたのは羽を切ったカラスの雛。カラスも鳥も嫌いだった筈が、逃げ出されてみて愛着に気づく。戻ってきたカラスのローラと2匹の犬と幸せに暮らしてたのに、婚約者が事故に遭ったのはカラスのせいだと娘が言いだして追い出される羽目に。ホテルにも泊まれないし放浪の挙句、ローマのアパートにたどり着く。バルコニーでのんびり暮らすローラにファン(老人)も出来たのに、ある日猫がやってきて、羽を広げたものの飛べないローラはそのまま落下して、たまたまそこにいたトラックの上に。もう会えないの。「観察記録」はいろんな人を描いたスナップ。コクトーとジッド、ボガート、モンローはわかるが褒めてるんだがけなしてんだか。インタビュー風の「自画像」は描かれたいことが良く書けている。

(37) 犬は吠えるⅡ(トルーマン・カポーティ):
黒人ミュージカルを上演するために冷戦下のロシアを訪れる劇団。「砲声絶える時詩神の声聞こゆ」は、ソ連高官の歓迎演説から。歓迎されてるんだかされてないんだか。理解はされてないみたい。いろいろと不便だし横紙破りもたくさん。でも劇団メンバーも負けてないのだった。「お山の大将」はマーロン・ブランドを描いたもの。日本で「サヨナラ」なる映画を撮影中のマーロンに都ホテルで取材。マーロンは親分肌というか自分だけを愛する子分に囲まれていたい孤独な男。気分が続かないので自分でも何をしたいかわからない。良く描けているのだろうと思う。

(20) シンプルな情熱(アニー・エルノー):
50前の地位あるバツイチ女性が恋におちてしまった自分をシンプルに書いたもの。恋ってこういうものだよね、あるあるエピソード満載。ストーリーらしいものもないし、ほんとにシンプルなんだけど、これ好き。訳者あとがきにこの恋について「いわゆるロマンスからは程遠い、激しくて単純な肉体的な情熱」と書いてあってびっくり。ぽかんと口が開いてしまった。肉体関係の有無にかかわらず、こういう激しい情熱こそが恋だ、と思うんですけど。この情熱から程遠い「いわゆるロマンス」って何?それは恋愛ごっこであって恋じゃないだろ。ぶつぶつ。作品は、「今の私には、贅沢とはまた、ひとりの男、またはひとりの女への激しい恋を生きることができる、ということでもあるように思える。」という文章で終わる。確かにそうだよね、と思う。ただし、そんな贅沢をもう一度したいか?と問われると断然遠慮するけどさ。

(27) レ・コスミコミケ(イタロ・カルヴィーノ):
SFというか壮大な宇宙創成ファンタジーともいえるがただの駄ボラな感じがぬぐえないのがカルヴィーノのいいところ(笑)。パスワード的な人物(?)名は縦書きは無理で訳者は悩んだろう。中では「見たゾ!」が今的で面白かった。

(42) 恥辱(クッツェー)はGuardian's1000で済

2021年2月9日

Guardian's 1000 (23)

今回もCrimeカテゴリーを中心に。Crimeは全147冊中71冊読破となるのでまだ半分行ってないけど、未訳もかなりあることを考慮するとこのカテゴリーについては半分は堅い。でもー、再読が終わってからはリスト順(=著者名のABC順)に読んでいるのに、まだDの途中。まだまだ読むのがあって嬉しいぞ。

(221) イリワッカー(ピーター・ケアリー/白水社):
「ケリー・ギャングの真実の歴史」に続いて、2冊目のピーター・ケアリー。詐欺師というか山師というか嘘だらけのハーバート・バジャリ―139歳!?の語る生涯。ComedyといえばComedy。バジャリ―を通してオーストラリアってこんな国というのがわかるようになっている。英国への反発、米国への憧れとやっぱり反発。中国の商売人と東南アジアからの出稼ぎと日本軍の兵士と、ジャパニーズ・ビジネスマン。オーストラリアらしさを出そうとしても、でも本当はアボリジニの国だったよね、的な。アメリカ的な「独立」を経ていない分、複雑なのかもしれないね。

(222) オスカーとルシンダ(ピーター・ケアリー/DHC):
3冊目のケアリーはLoveカテゴリー。厳しい父に育てられた臆病者のオスカーは牧師になるが、生活のための賭博から抜け出せない。野心家のママから遺産を受け継いだルシンダは、誇り高く周りの評判を気にしないが、でも思うとおりに生きられるわけではない。ガラスに愛着を持つルシンダと無垢で純粋にガラスを褒めるオスカーは互いに惹かれるのだが、相手の思いがわからず自分からは言い出せずにうじうじ。奥地に越していったルシンダの知り合いの牧師ハセットにガラスの教会を届けたら、自分の財産をオスカーに分けよう、と約束をするも、それが結婚を意味すると気付かないオスカーは、苦労の末に到着して、そこにいた女ミリアムに絡めとられ、失意の中で失踪。純愛ではあるのだが、さっぱりロマンチックではなく、まだるっこしい。

(223) ミス・ブランディッシの蘭(ジェームズ・ハドリー・チェイス/創元推理文庫):
大富豪のお嬢様ミス・ブランディッシとその婚約者は軽率にも超高価な首飾りをナイトクラブに着けていった帰り道に強盗3人組(ちんぴらギャング、と登場人物紹介に書いてある)に襲われる。首飾りだけが目当てだった筈がうっかり婚約者を殺してしまい、困ってお嬢様を連れてアジトに帰る。美人で保護欲をそそるらしいお嬢様。どうなるかと思いきや、ちんぴらではない真正ギャングに横取りされてしまう。チンピラ達はその場で殺され埋められる。真正ギャングはチンピラの振りをして身代金を回収、お嬢様は返す予定だったのに、ギャングのボス(正確には陰のボスの息子)が恋着してしまう。お金はロンダリングしてよその町に移動し、お店を開店。お嬢様は麻薬漬けにして拘束。そこにようやく私立探偵が登場し、案外手際よく(怪我もするけど)真相を見抜いてお嬢様を救出するのだった。犯罪小説ではあるが推理する余地はないし、あまり面白いとも思わない。救出はしてもスカッとはしないし。そもそも題名の「蘭」ってどこに出て来たんだ?と思ったら、原題はNo Orchids for...えーっ!訳者あとがきによると「蘭はない」まで訳すと長すぎるということだったらしい。だからって。ぶつぶつ。

(224) 白衣の女(ウィルキー・コリンズ/岩波文庫):
岩波文庫だけど普通にミステリー。「白衣の女」って看護婦さんみたいだけど単に白い衣装の女。各人の日記や記録で構成。犯罪に至る過程から始まるけど、どういう犯罪がどう起こるのかは伏線がはっきりしてて想像付きやすい。推理小説としてはイマイチだけど、元祖だからな。被害者の姉のオールドミス、マリアンが魅力的。最後はボクの親友を紹介して安直なハッピーエンド、なんてことにならない所は好感持てる。

(225) 影なき狙撃者(リチャード・コンドン/ハヤカワNV):
朝鮮戦争下、騙されて捕虜になった一団にソ連は催眠術により超優秀なスナイパーを確保、米国の英雄にまつりあげる。上昇志向の強いお嬢様なママにコンプレックスを抱える彼は催眠術下の殺人をこなすが、唯一の友人(戦友)を救おうとしたことで仕掛けが壊れ始める。ちょっと荒唐無稽過ぎかな。主要人物も極端すぎる性格に思える。

(226) 殺人の詩学(アマンダ・クロス/三省堂):
女教授ケイトが探偵役となるシリーズの第三弾だそうだが。ケイト殆ど探偵してません。当時は自立した女性が珍しくてカッコ良かったのだそうだけど、今読むと全然古い型の女。推理小説としてもちょっと。一番疑わしい人がやっぱり犯人で、しかし動機がないと思っていたら、殺すつもりも害するつもりもなかった、って。いやいや。アスピリンが重要な役割を担うんだけど、これアスピリン中毒?2錠で?アレルギーにしては症状が変。変だからエレベーターの停止が致命的となったことにしたのかなと思うが、そもそも停止自体が意味不明。嫌がらせなら他にすることある気がするし、故障が起きれば業者が呼ばれて悪戯がバレるでしょう、普通。被害者が「しまった、アスピリンだ!」と言い残すのもなんだかな。そもそも頭痛薬をイギリスからお取り寄せは如何なものか。アメリカでは違う名前で売られているのを知らないだけじゃないのか?頭痛薬の飲み過ぎは頭痛の元なんだぞ。表紙の粗筋紹介には証拠の全てがケイトを指していると書いてあるが、そうは思わないし。みんなもあまりそうとは思ってなさそうだし。大学紛争の様子は少し面白いが、あまりちゃんとは描かれていない。原題のPoeticは、各所にオーデンの詩が引用されてるからだと思うが、Justiceは殺人ではないし、詩学でもないと思う。いろいろ気に入らない。ぶつぶつ。

(227) ラット・キング(マイケル・ディブディン/扶桑社ミステリー):
伊ペルージャを舞台に、大富豪誘拐事件に駆り出されるベネチア人のゼン警視。身代金を払ったのに殺されてしまう。警察が同行したせいだと言われるけど何か変。ラットキングは鼠の王だが、鼠が狭い所にくっついていると皆のしっぽがくっついて固まり、離れられなくなってしまう。でも死ぬこともなく互いにいがみ合いながらも生きていくそんな鼠の塊のことだそうで。気味悪。そんな鼠のように大富豪の子供たち+配偶者達は憎み合い、妬み合い、外部に向けては固まっている。登場人物はイタリア人ぽいのだが、食事がなんだかな。南部と北部の対立は想像付くし、ベネチアが別格でお目こぼしな感じも理解できる。アメリカ人彼女とは食べ物が折り合えない。そりゃそうだ。アメリカにはお金の他は自然しかない。そうそう。

(228) ダーティー・トリック(マイケル・ディブディン/扶桑社ミステリー):
オクスフォード出たのに流行に乗って世界を放浪している間にうっかり時流に取り残された中年男。母国に戻っても居場所がなく、外国語教師となるもジリ貧。成り上がり夫婦の財力で自分を取り戻せたような、かえって堕ちたような。でもお金がないとどうにもならない。不倫がバレそうになったところで運よく旦那が死んで結婚。お金は手にしたものの、奥さんの品性が気に入らないし、周りからも白眼視されている。上品な婦人に乗り換えようかと思っていたら妻が妊娠したと言い出した。自分はパイプカットしたのに誰の子供?まぁいいかお金貰って離婚して、と思ってたのに浮気相手が嫌味な元上司とわかってつい反撃の計画を立ててしまう。ところが当日に妻が階段からうっかり落ちて半死の状態に!浮気相手を誘拐して殺人の容疑を被せ、共犯者(素行の悪い生徒)は海外に脱出させる。無実の浮気相手はしかし状況証拠で有罪になり、妻の遺産を相続、狙っていた婦人ともいい仲になれてラッキーな日々だったが、証人が現れてまずい状況に。お金をもって海外逃亡!自分は犯罪者だけど、殺人はしていない。そして逃亡先の国と英国との犯罪者引き渡しは殺人に限られてるんだから大丈夫なんだもん。なんと!確かにこれは汚いトリック。

(229) 約束(デュレンマット/ハヤカワNV):
デュレンマットは光文社古典で短編集を読んでこれが2冊目。推理小説ではない。犯罪はあるが、犯罪を描いたものとは言えないな。探偵小説なら言えなくもないけど。腕のいい刑事のマテーイが栄転の前日、少女が惨殺される。ご両親に必ず犯人を捕まえますと約束、栄転をフイにして捜査にのめりこむ。容疑者は第一発見者の行商人。性犯罪の前科がある。みんなにお前が犯人だ!と言われる中、容疑者はあっさり自殺。凶器のカミソリも胃の中にあったチョコレートも、同じじゃないかもだけど持っていたし、それ以降犯罪は起きなくて、やっぱりあいつが犯人だったとみんな納得したんだけど。少女の友達の話を聞いたマテーイだけが別人が犯人だと考え、警察を辞めてまで個人捜査を続ける。更に被害者に似た孤児を引き取り、同じような格好をさせて囮捜査に発展!チョコレートくれる人物が現れて警察もみんなで待つが・・・犯人来ない。その後も囮捜査を続けるが孤児はいつか大人の女になり・・・。そしてある日、死にゆく老婦人が息子が真犯人だと告解する。息子は少女に会うために出掛けた途中で事故に遭ったのだと。捜査に執念を燃やす狂気のマテーイに真実を告げても全然聞いてない。あわれ。

(230) ビッグ・ノーウェア(ジェイムズ・エルロイ/文春文庫):
LAコンフィデンシャルの前夜、レッド・パージ時代のハリウッド。群像劇なのだが中では割と感じのいい方の(?)二人が死んでしまってビックリ。最後に残るのは小物に見える金欠のバズ。恋に生きる結末はちょっとかっこいいけどね、人が死に過ぎのように思う。それに都合よく整形で変身もどうだろう。でもLAだからなー。ありえるよなー。

2021年2月2日

挽茶のゼリー

挽茶というのは抹茶のこと。正確には違う場合もあるようですが、「家庭でできる和洋菓子」においては、抹茶と同じものです。今では「抹茶」の方が一般的だけど、当時は「挽茶」の方が一般的だったのかなぁ??

抹茶とお砂糖を牛乳に溶かして寒天で固める。「家庭でできる和洋菓子」には、よく混ぜてから布で濾せと書いてあったけど、面倒くさいし良く溶けたように見えたのでそのまま固めたら写真のようなことに。まぁ、二層にして抹茶味の濃淡を楽しめるようにしたのさ、と言い訳出来ないこともない。濃い抹茶味はそれなりに美味しかったので良しとします(苦笑)。
 

2021年1月20日

ハヤカワepi文庫シリーズ (4)

既に他リストに掲載済みでも、光文社古典新訳については再度読み直すルールで読んでいるけど、ハヤカワepi文庫については、光文社古典で読んだものは再読しないことにする。なんでかっていうと、ハヤカワepi文庫は必ずしも「新訳」ではないし、光文社古典みたいに解説や後書きが充実しているとは限らないので。
というわけで、epi番号014の「うたかたの日々」(ボリス・ヴィアン)についてはパスとします。

(5) 心臓抜き(ボリス・ヴィアン):
ヴィアンは光文社古典新訳で読んだ「うたかたの日々」に続いて2冊目。これもシュールな話だけど、こっちはだいぶグロい。うたかたの方が好き。心が空っぽなので他人の話を聞くことで満たしたいという精神分析医のジャックモール。村の人が捨てた「恥」を拾って浄化するラ・グロイールが印象的だな。ジャックモール君が後継者になるのだが、ちゃんと全うできるのか?少し不安。心配症過ぎて息子たちを鳥籠に閉じ込めてしまうママはあるある。

(23) レス・ザン・ゼロ(ブレット・イーストン・エリス):
舞台はLA。大学の冬休みに帰郷した俺は、セレブな家族と食事したり、高校時代の友達と遊んだり。彼女も同級生だけど、4カ月間も連絡しなかったし、まだ恋人なのかどうなのか。自分はホテル王の孫。友達の親は映画関係者が多いし、モデルや俳優を目指す知り合いも多い。舞台背景はビバヒルなんだけど、青春!な感じはないし(未熟な感じはあるけど)、アメリカンドリームの欠片もないのは、時代や階層の差というよりもテレビドラマと小説の差なんだろう。著者は在学中に本書でデビューしたのだそうで、周りはこんなだったんだろうね、すごいな。学生時代に聞いていた曲がてんこ盛りで同時代感はあるのだが、ずいぶん違う青春だなと思う。もっとも全然羨ましくはない。

(24) ぼくは怖くない(ニコロ・アンマティーニ):
一昔前の南部イタリアの小さな小さな村。数家族しかいない。出稼ぎで生計を立てるが、テレビの向こうには裕福な生活が。主人公ミケーレは9歳。頭も力もソコソコだが、苛めっ子にやれっぱなしではない正義感の持ち主。ある日罰ゲームで入った廃屋で生死不明の子供フィリッポに出会う。ヒーローなら助けなくちゃ、と水やら食べ物やら持っていき守護天使だと言われてしまう。テレビニュースでフィリッポは身代金目当てに誘拐されたんだとわかるが、悪者は誰なのか?秘密を打ち明けた親友にも裏切られ、徐々に真相に近づいてしまう。もう関わっちゃダメとパパにもママにも言われたのにフィリッポを救出に向かうミケーレ。ぼくは怖くない!どう決着するのやらと思っていたらあっさりとバッドエンド・・・哀しい。

(53) 一九八四年(ジョージ・オーウェル):Guardian'sで済

(82) ならずものがやってくる(ジェニファー・イーガン):
A面に6曲、B面に7曲のアルバム構成。それぞれに主人公も時代も違うけど、全体のストーリーをいろんな側面で追う感じ。親から孫の世代。孫は現代(9.11後)。ヒッピーからロックの世代、広告マーケティングの時代、そして。現在ではA面/B面もないもんなー。盗癖のあるサーシャの物語は切ない。元上司のベニーと奥さんのステファニーは成功して郊外に家を構えるけど周りの真性お金持ち(は共和党支持者)といまいち仲良くなれない。パブリシストのドリーはパーティーで事故を起こして過去の人になったけど、将軍を広告する羽目に。お金になればなんでもいいのか?悩みながら、でも成功すると仕事は楽しい。娘のルルはクールだけど「ならずもの」の命がけコンサートを成功に導く。デジタルを信奉しながら、手作りに惹かれたりする。変わっていくのか変わってないのか。でも変わっているよねやっぱり。アメリカに限った話じゃないけど、でもとてもアメリカっぽい。

(87) 動物農場(ジョージ・オーウェル):
これもGuardian'sで読んだんだけど、ちくま文庫だったし、新訳だと書いてあったのでepiで再読することにした。でも印象変わらないなー(当たり前)。前に読んだ時よりハッキリとこれはソ連だなーと思える。でもコロナ禍の今、他人事ではなく、全体主義に向かう方向に危機感を感じる。私権を規制された方がある意味ラクではあっても、規制されない方がやっぱり望ましい。何で規制されないと行動できないんだろ。しかし、そんな国民だったら滅んでしまった方がイイとも言えないんだよ、やっぱり。難しい。