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2017年8月31日

錦玉糖(食品番号:15015)/錦玉羹

これも再掲。前回書いたやつはタイトルを「干錦玉/きんぎょく糖」に変更しました。

「錦玉糖」でGoogleするとたくさん出てきてたのはあっち(干し錦玉)だったんだけどね、食品成分表の定義は「寒天を水で加熱溶解した後、砂糖を加えて煮つめ、水あめを加え、型にいれて固めたものである」。これだとたぶんこっちだと思うのね。AJの認識ではこれは「錦玉羹」なんだけど・・・

両口屋是清の「沢の翠」
大雑把に説明すると、透明な羊羹。食べたことはなくても、見たことならあるのではないでしょうかね。
左写真は、両口屋是清の「沢の翠」。ハーフ羊羹位のサイズで売られています。

透き通った部分が寒天(+砂糖と水あめ)、そこに深緑の楓の葉っぱ型、薄緑と赤と茶色の長細い枝?茎?藻?を模した羊羹が浮いています。私は赤いのが金魚だとずっと思っていたけど・・・沢に金魚はいませんね。まぁとにかく涼し気な、夏の和菓子。

お店によってはもっと具象的な金魚や花が浮かんでいたり、羊羹と二層になっていたりする。これは見るからに竿菓子(=羊羹タイプ)ですが、上生菓子風というか、最初から一人分サイズにデザインされたものもあります。

ちなみに「琥珀羹」も同じ。
琥珀羹だと、琥珀色で中にいろいろ入れない(だって琥珀なんだから)けど、錦玉羹だと、にぎやかな飾りが浮かんでいる(だって錦の玉なんだから)、という感じ。実際にはシンプルなのに錦玉羹を名乗っている場合もあれば、逆のケースもあります。
そして、食品成分表もそうであるように、どうみても生菓子なのに錦玉糖とか琥珀糖という名前のものも多い。ま、食べ物の名前なんて、どっちが正解ってこともないんだけどさ。

錦玉羹/錦玉糖は夏にはよく見かけますが、その他の季節には激減します。錦玉羹はベタベタ甘いので、食べるなら初夏がお勧めかなぁ。

2017年8月24日

薬の外郎 内容編(1)

お薬の外郎は、今では仁丹みたいに銀箔が貼られているけど、昔はクレオソートみたいな丸薬だった。お菓子の外郎は黒糖味の黒みがかった色が、お薬に似ているから外郎と呼ばれる、という説もあるという話は、お菓子の外郎にも書いた。それはどうかなと思う。だって、外郎薬じゃなくても、大抵の丸薬は同じような色をしてるもの。「くすりもち」とかいう名前なら納得だけど。
外郎家が売っていたからお薬の名前もお菓子の名前も「外郎」になってしまったと考えるのが妥当だと思う。黒砂糖は明国経由でしか入らない珍しい色/味でもあっただろうけど。

お菓子の外郎の正しい名前は分からなくなってしまったけど、お薬の方は残っている。
外郎売の口上にも入ってるんだけど、その名は「透頂香(とうちんこう)」。

「香」?って思いませんかね。
これ本来は飲む薬ではなく、wiki(ういろう(薬品))によると冠の匂い消しだったのだそうで。
生薬は精油を含むものが多いから、香料と重なる部分は確かに多いんだよね。そして胃腸の不調や炎症の類は、香料の「すっとする」感じで治る(ような気がする)ことが多いし。
そして練香は丸薬に限りなく似ている。頼りのwikiに画像がないぞ。ええとね、丸い黒い粒で、こんな感じ(日本香道)。これをたぶん焚いて冠に匂いを移すんだと思う。

誰かがお香の筈の透頂香をうっかり飲んでみたんだろうか?弥次喜多じゃあるまいし。それとも日本では最初からお香ではなく、お薬として売り込まれたのか?
ま、冠の匂い消しでは京都はともかく小田原では売れないよな。鎧兜もくさくなりそうだけど、そこでお香を焚くのは関東武士としてどうなの、って気がするもの。そして江戸の太平の世には、鎧兜も要らなくなったし、飲み薬になるとは先見の明があったね、透頂香。


2017年8月20日

薬の外郎 歴史編(2)

本家の京都外郎家は「外郎」の名の通り(正確には、字の通りの中国の外交官ではないのだが)、対明貿易にも関わっていたのだが、小田原から明国は遠すぎる。たぶん小田原外郎家には外交官としての働きは誰も求めなかったんだと思う。小田原に根付いた時点で当人も薬屋(薬種問屋は含む)として生きていくつもりだったろう。

お薬(或いは香料)を売る相手として、京都ならお公家様がいるけど小田原(ていうか京都以外)にはいない。そもそも京都や大阪のような大都会に比べて、小田原(を含む関東)はお金持ちの数が圧倒的に少ない。セレブ相手の商売には不利なんだよね。

というわけで恐らく、小田原外郎家は早くから庶民を相手に商売を始めたのだと思う。

最初は「街道薬」として有名になった。
街道薬てのは、街道を通る人が買うお薬で、旅の友であり、お守りであり、そして何よりお土産としても通用するもの。軽くてかさばらないし、実用的でいいお土産だよね。
参勤交代の制度もあって街道インフラが整備され、平和な時代が続いてだんだん余裕も出来、江戸時代の中期以降は、庶民も旅ができるようになる。今でいうと世界一周みたいな感じかな。誰もが行けるわけじゃないけど、宇宙旅行ほど夢のようなことでもない。暇とお金があれば案外安全に旅ができる。
小田原は東海道五十三次の中でもかなり大きい城下町。京都まで行かなくても伊勢まで、或いはもっと手軽に箱根まで。小田原まで行くと江戸人が大好きな富士山もだいぶ近くに見えるしさ。
小田原ういろう本店は、今でも国道一号沿いに堂々としたお城を構えています。(本当にお城風なんだよう)。

これだけなら他の街道薬も負けていません。寺社のお薬もいろいろある。

小田原外郎がすごいのは、なんといっても歌舞伎の「外郎売」で売り出したことなのである。

お正月に見たブラタモリでは、初代團十郎が成田不動尊を売り出した話をやっていた。二代目を授かったことが嬉しかったのだそうだ。二代目は持病が治ったのがうれしくて、小田原外郎を勝手に売り込んでくれた、とういろう家は言っているが・・・PRを頼んだんだと思うなー。そりゃよく効いていい薬だと思ったから応じたのだろうけど。
外郎売は口上の面白さもあって爆発的なヒット。日本各地に外郎はあるのに、本家は京都なのに、「外郎=小田原名物」とみんなが思うようになった。これって昭和のTVコマーシャルにより、「ういろう=青柳ういろう=名古屋名物」と思われてるのと同じ構図よね。

小田原外郎は、東海道膝栗毛にも出てくる。お薬の外郎をお菓子の外郎だと思って食べてしまう話なのだが、そんなの間違えるわけないだろ!と思うから笑えるのであって、 両方の外郎を知らないと「ふーん?」で終わってしまう。それだけお薬もお菓子もみんなに知られていたってことよねぇ。

2017年8月13日

薬の外郎 歴史編(1)

「外郎」という名前が、お薬及びお菓子を伝えた中国人の役職名だった、という話はお菓子の外郎の所にも書いた。

wikiによると、その中国人は陳宋敬さんという人で、外郎というのは「外」が示す通り、外交官のことなのだそうだ。元から明に国が変わってしまい、外交官のコネを活かして博多に亡命。亡命先でしょんぼりと人生を終えた、のではなく、日明貿易に携わった。
外交官だった位だから、中国語は完璧だし、輸入するものの正しい産地や値段にも詳しかったんだろう。まがい物を高価でつかまされることが多かった日本人バイヤーにとって、頼りになる顧問だったに違いない。本人も自分の価値をしっかり理解していたのだろう、その知識を子供に引き継いだのだ。
で、二代目である陳宋奇さんも、「外郎さん」として頼りにされることになる。その評判は博多から都にも届き、室町幕府から是非京都に来てください!と招聘される。その子孫も「外郎さん」=「外郎家」と呼ばれるようになる。

貿易全体に関わっていたのだろうけれど、生薬(漢方薬の原料)は、本物を知らないと見分けるのが難しいし、適正な価格で買うのも難しい。その辺の雑草を「超高級品の朝鮮人参!」とか売りつけられても、本物じゃないから効かなかったのか、医者の診たてが悪いのか、判断に困るもんね。美術品なら、偽物でも安物でも、自分がいいと思って納得できる価格で買えばいいやと割り切ることも出来るけど、生薬ではそうはいかない。だから、生薬の輸入+お薬に調合して売る、を室町幕府バックアップの元、外郎家が独占的に行って好評を博した、のは想像に難くない。

が、問題は、なんで小田原?というところなのだ。
wikiにはムニャムニャと書いてあるけど、小田原外郎家と京都外郎家は血が繋がっているか不明らしい。小田原外郎家の元祖は、京都外郎家の家系図には出てこないってことだろう。実子を勘当したのかもしれないけど、婚外子とか丁稚とかが企業秘密を持って出奔したのかもしれない。
とにかく秘伝のお薬とお菓子の作り方等などを持参して、落ち着いた先が北条早雲の元だったわけだ。時は乱世の幕開け応仁の乱、室町幕府の崩壊も近い。
京都外郎家は、おそらく室町幕府と近過ぎたために、だんだん存在が小さくなっていく。それに比べて小田原外郎家は、北条家(後北条家)が五代で終わっちゃったあとも、豊臣家や徳川家に用いられ、元気に生き延びた。

しかしそれだけだったら、「権力者の御用達ブランド」で終わっていたよね。小田原外郎のエライところは、外郎薬って言ったら小田原!と一般庶民まで浸透させたことだ。さてどうやって?続きは次回。

2017年8月11日

唐饅頭(食品番号:15032)

こちらも再掲。

前回書いた時は、当初、四国名物の唐饅頭だと思って買ってきたのに、どうも違うことが分かって(あれはいわゆる饅頭とは違うしな)、更に「カステラ饅頭」との差が分からなくなって匙を投げたのだったが、その後の調査で分かってきた。たぶんわかった、と思う。

唐饅頭に対する食品成分表の定義は、「加熱した平鍋に置いた丸型、胴型等の枠型に、小麦粉、鶏卵、砂糖等を用いた生地を入れて焼き、あんを丸めてから扁平につぶして乗せ、さらに生地を入れて、ひっくり返し、型に接触している側面には焼き色がつかないように焼いたものである。本成分表の『とうまんじゅう』は四国地方の同名の菓子〔黒砂糖に擂り胡麻(すりごま)を混ぜたものをあんとしたもの〕とは異なる。収載食品は、小豆こしあんの製品である」。

唐饅頭は「家庭で作る和洋菓子」にも採用されていて、こちらには写真も作り方もあるから、確実にこれだ、という自信が今回はあるんだもんね。

こちらでございます。これは小田原のういろう(店名)で買った。
ちゃんと「唐饅頭」と書いてあるぞ。中身は小豆こしあんで食品成分表の定義ともぴったり。

「和洋菓子」のも同じで丸みを帯びた四角形。これを「胴型」っていうんだろうか?「和洋菓子」には「唐饅頭の型」と書いてあるので、典型的な唐饅頭の形のひとつではあるらしい。
和洋菓子の材料も「小麦粉、砂糖、卵」でばっちり。

よく似た和菓子に「今川焼」があるけど、今川焼は「鶏卵、砂糖を混ぜ、水に溶かした膨張剤、小麦粉を加えてこね、水を加えて混ぜ合わせた生地を、加熱した焼型に流し込んで、あんを入れ、別の焼型で後から焼き始めた生地とあんを挟むように合わせて、焼いたもの」なので、「膨張剤」の有無と、「別の焼き型で後から焼き始めた生地とあんを挟むように」が違うのである!

見た目はすごく似てて写真じゃわからないし、AJには食べてもわかる自信はないけど(笑)、人形焼きやもみじ饅頭は唐饅頭ではなく、今川焼の仲間に入るということが理解できた。

さて、wikiの唐饅頭の記述の冒頭に出ている、カステラ生地タイプの「唐饅頭」も箱根旅行でゲットしたきたぞ。wikiには「都まんじゅう」と書いてあるが、AJの認識は「都まん」。機械でガシャガシャ作られる。

箱根湯本の菊川商店で買った箱根まんじゅう。
店先にガシャガシャ動く機械がある。うまく写真撮れなかったけど、検索すれば出て来るので興味ある人は食べログへどうぞ。

中は白あん。
見た目今川焼風だけど、円筒型に生地を入れて焼く→餡子を載せる→さらに生地を載せて、型ごとひっくり返す。唐饅頭の焼き方に相違ない。

同じような饅頭が「カステラ饅頭」の名前でwikiに記載されている。説明文中に唐饅頭である、と書いてあるけど、食品成分表には「カステラ饅頭」と「唐饅頭」は別項目として収載されているので、話がややこしくなっていたのだ。wikiの「カステラ饅頭」=浜松銘菓 秋芳堂の松菱饅頭は、食品成分表の定義では、「唐饅頭」であり、「カステラ饅頭」ではありません。

ということで決着。 ああ、スッキリ。
じゃあカステラ饅頭とは何か?ひよこの類、という定義であっていたのよ、たぶん。詳細は「カステラ饅頭」で。

葛餅、葛でんぷん製品(食品番号:15021)

正しい「葛餅」こと関西くずもち。
食品成分表の定義では、「新たに収載した『くずもち、くずでん粉製品』は主に関西で流通し、『くずもち、小麦でん粉製品』は主に関東で流通している。砂糖入りのきな粉や黒蜜を付けて食べることが多い和菓子である」。

AJ自身も、くず餅=関東くず餅=あれで葛が使われている(昔は使われていた)と思っていたくらい、関東では見かけない葛粉の葛餅。奈良に行った時に食べた葛餅は、黒蜜が練りこんであって、(たぶん)、今回はもっと標準的なやつをアップしたいなぁ。あまり見掛けないけど、都内でも関西系の甘味処なら置いているだろうと思ったのに、検索しても見つけられなかった。
箱に入ったやつなら、奈良県アンテナショップには確実にある。日本橋高島屋の銘菓売り場でも売っているのを見つけて、ちょっと大きいけどこれ買えばいいか、と思っていたのだった。

ところが。
先日出掛けた箱根の旅館で、デザートに葛餅が出てきたのだった。ラッキー♪
じゃーん。これがいわゆる葛餅(関西くずもち)だよん。ひんやりでプルルンなのだ。黒蜜と黄粉という組み合わせは関東くず餅と同じ。

ちなみに高島屋で売っているのは、奈良の松屋本店の。 箱に入っている状態では、船橋屋のくずもちに似ているような気が・・・しなくもない。全然違うんだけど。
ちょっと量が多いなー、でも食べてみたいなー、という方は、奈良県ショップ(日本橋の奈良まほろば館)に行けば、カップに入った状態のも売ってたよ。 夏の間にどうぞ。

2017年8月5日

夏休み終わった

早めに取った夏休みは箱根に行ってきた。箱根は何回か行ったことあるけど、今回は二泊三日でのんびりめ。3日目は小田原見物もしてきて、お薬の外郎も買ってきたよん。お菓子の外郎については先ほど更新が完了しました。お薬の外郎については、もう少し調べてから医療用語の方で取り上げる予定。他にもいくつか和菓子をゲットしてきた。(何しに行ってんだか)

箱根は日帰りでもお泊りでも行ったことあるんだけど、箱根湯本に泊まったのは初めて(たぶん)。箱根湯本って玄関口だと思ってたけど(確かに玄関口なんだけど)、「湯本」というだけあって、ここのお湯いいじゃんと思った。湯本までなら近いので、何も登山列車とか乗らなくても、温泉行くだけなら湯本で十分な気がする。まぁ近すぎてリゾート感には欠けるかもだけど(笑)。

小田原は外郎を買うのがメインの目的で、小田原城公園には行ってみたけど、天守閣に登ってもいない。 でもいい公園だった。公園の中に市立図書館があって、いい感じに古びた図書館で好感が持てた(褒めているつもり)。
それに比べると同じ公園内にある報徳二宮神社は、併設しているカフェ群(正式名称:報徳の杜。最近できたらしい)が無駄に今風にお洒落で感心しない。こちらは小田原市の持ち物ではなく、神社が経営しているようだけど。お店はもっと増やす予定のようだった。神社がお洒落になってはいけない、という筋合いはないけど、なんだかなーと思った。

まぁでも小田原はいい街だなと思った。お魚もかまぼこも美味しいし、小田原提灯・・・には用がないけど(笑)。宿場町らしい陽気さみたいなものがある。
次に行くときは、小田原でご飯食べて、箱根は湯本で温泉だけ満喫ってのもいいかも、等と夢想する今日この頃。

飴玉(食品番号:15041)

再収載。
以前書いた時には悩んだ末に、「AJのイメージする『和菓子の飴』は、透明ではなくて白っぽいもの。わかりやすく言うと、金太郎飴みたいなやつ。 有平糖とかべっこう飴は透明だけど、これらは南蛮由来ていうかキャンディ由来な気がする。『和菓子の飴』に、こういうのを選んではいけないと思うのね」、と思って金太郎飴風を載せたんだけど。

食品成分表の定義は、「砂糖と水あめを主原材料として煮詰めたものである。使用する副原材料により、種類が多い。砂糖以外の甘味料を用いた製品も多い。本成分表では、砂糖と水あめを用いる最も基本的な配合割合のものを対象とした」。

ううう。砂糖と水あめだけって言ったら有平糖よね、有平糖で飴玉と言ったら榮太樓の梅ぼ志飴よね、というわけで買って来ました、梅ぼ志飴。

梅ぼし飴って梅干し入ってるじゃない?と思う人が多い気がする。
榮太樓の「梅ぼ志飴」は、「梅干し飴」ではありません。梅干し入ってないし、梅干し味でも梅味でもない。単なる砂糖味。
何で「梅ぼ志」かっていうとー、赤くて三角ぽい形が梅干しに似ているからって、江戸っ子が勝手に「梅ぼし飴」と名付けてしまったのだそうだ(by 榮太樓)。形が似てても、味は全然似てないよ!ってところが逆に江戸っ子のしゃれっ気というか悪戯心だったのかね。

有平糖は南蛮由来です。金平糖と同時期に日本に入ってきたと言われている。普通有平糖っていうと飴細工をイメージするけど、飴細工のことを「飴玉」とは言わないもんね、梅ぼ志飴なら飴玉でしょ?

AJは榮太樓の飴では、かつぶし飴が一番好き。鰹節の形をしている飴だけど、もちろん鰹節は入っていません。黒糖味だよ。昔は引き出物とかで良くもらったのだが、今は飴とか砂糖とか配らなくなったよね。

くずもち、小麦粉でん粉製品(食品番号:15122)

2005年版で新たに収載されたくずもち。

食品成分表は正確には、「くずもち<葛餅>、小麦でん粉製品」という記載になっているのだが、小麦粉製のを「葛餅」とは書かないんだよ、さすがに。
「くず」餅と平仮名で書くか、「久寿餅」と当てる(川崎大師系)。

写真は亀戸名物 船橋屋の「くず餅」の盛り付け例。三角っぽく切ってあるのがお約束。

葛粉を使った葛餅のように透明ではなく、白こんにゃくのような薄灰色で、モチモチ弾力はありますが、葛餅のモチモチプルルンとは大分違って、ねっとりベタベタしたモチモチです。

パッケージを開けたところ。黒蜜と黄粉付き。
添付された説明書の冒頭を引用すると、
「厳選された小麦粉を仕込み水で練り、樹齢を重ねた杉の大樽に寝かせ待つこと450日。自然発酵した小麦澱粉粉を蒸し上げたくず餅は、ほのかな香りと酸味、しなやかな食感が特徴です」。
食品成分表の解説には、「『くずもち、くずでん粉製品』は主に関西で流通し、『くずもち、小麦でん粉製品』は主に関東で流通している。砂糖入りのきな粉や黒蜜を付けて食べることが多い和菓子である」とさらりと書いてある。
間違ってはいないのだが、これだと「葛粉」と「小麦粉」の違いだけに思えてしまうよね?そうではなくて、船橋屋の商品説明にあるように、「自然発酵した小麦粉澱粉を蒸し上げた」の所がポイントなのだ。こう見えても発酵食品なんですぜ!関西くずもち(葛餅)とは全然違う食べ物なのだ。

当初は葛粉を使った発酵食品で・・ということでもなく、最初から小麦粉だったらしい。なんで「くず餅」という名前にしてしまったのか謎。葛餅に似せて作ったにしては違いすぎ。「葛」と関係ないなら、「屑」に通じる「くず」餅という名前を普通は付けないと思うんだけど。
関東以外の人(特に関西人)が、何これ!と驚愕するのは無理もない。しかし関東人の多くはこのくず餅しか知らないのだよ。

AJにとっては、亀戸天神土産なんだけど、川崎大師と池上本門寺と亀戸天神の3つが有名どころであるらしい。寺社の門前で食べる名物ってことね。少しは日持ちするので昔からお土産向きでもあったんだろうな。
あまり一般的な和菓子とは思えないんだけど、「自然発酵した小麦粉を蒸し上げた」のは、他の和菓子とは大きく異なるので、食品成分として考えると収載する意味はあるのかもしれない。

それ食べたことない、という方は、東京のデパートならほぼ船橋屋は入っているので食べてみてね。感動の美味しさ・・・かどうかはともかく(笑)、独特の味がします。