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2021年1月20日

ハヤカワepi文庫シリーズ (4)

既に他リストに掲載済みでも、光文社古典新訳については再度読み直すルールで読んでいるけど、ハヤカワepi文庫については、光文社古典で読んだものは再読しないことにする。なんでかっていうと、ハヤカワepi文庫は必ずしも「新訳」ではないし、光文社古典みたいに解説や後書きが充実しているとは限らないので。
というわけで、epi番号014の「うたかたの日々」(ボリス・ヴィアン)についてはパスとします。

(5) 心臓抜き(ボリス・ヴィアン):
ヴィアンは光文社古典新訳で読んだ「うたかたの日々」に続いて2冊目。これもシュールな話だけど、こっちはだいぶグロい。うたかたの方が好き。心が空っぽなので他人の話を聞くことで満たしたいという精神分析医のジャックモール。村の人が捨てた「恥」を拾って浄化するラ・グロイールが印象的だな。ジャックモール君が後継者になるのだが、ちゃんと全うできるのか?少し不安。心配症過ぎて息子たちを鳥籠に閉じ込めてしまうママはあるある。

(23) レス・ザン・ゼロ(ブレット・イーストン・エリス):
舞台はLA。大学の冬休みに帰郷した俺は、セレブな家族と食事したり、高校時代の友達と遊んだり。彼女も同級生だけど、4カ月間も連絡しなかったし、まだ恋人なのかどうなのか。自分はホテル王の孫。友達の親は映画関係者が多いし、モデルや俳優を目指す知り合いも多い。舞台背景はビバヒルなんだけど、青春!な感じはないし(未熟な感じはあるけど)、アメリカンドリームの欠片もないのは、時代や階層の差というよりもテレビドラマと小説の差なんだろう。著者は在学中に本書でデビューしたのだそうで、周りはこんなだったんだろうね、すごいな。学生時代に聞いていた曲がてんこ盛りで同時代感はあるのだが、ずいぶん違う青春だなと思う。もっとも全然羨ましくはない。

(24) ぼくは怖くない(ニコロ・アンマティーニ):
一昔前の南部イタリアの小さな小さな村。数家族しかいない。出稼ぎで生計を立てるが、テレビの向こうには裕福な生活が。主人公ミケーレは9歳。頭も力もソコソコだが、苛めっ子にやれっぱなしではない正義感の持ち主。ある日罰ゲームで入った廃屋で生死不明の子供フィリッポに出会う。ヒーローなら助けなくちゃ、と水やら食べ物やら持っていき守護天使だと言われてしまう。テレビニュースでフィリッポは身代金目当てに誘拐されたんだとわかるが、悪者は誰なのか?秘密を打ち明けた親友にも裏切られ、徐々に真相に近づいてしまう。もう関わっちゃダメとパパにもママにも言われたのにフィリッポを救出に向かうミケーレ。ぼくは怖くない!どう決着するのやらと思っていたらあっさりとバッドエンド・・・哀しい。

(53) 一九八四年(ジョージ・オーウェル):Guardian'sで済

(82) ならずものがやってくる(ジェニファー・イーガン):
A面に6曲、B面に7曲のアルバム構成。それぞれに主人公も時代も違うけど、全体のストーリーをいろんな側面で追う感じ。親から孫の世代。孫は現代(9.11後)。ヒッピーからロックの世代、広告マーケティングの時代、そして。現在ではA面/B面もないもんなー。盗癖のあるサーシャの物語は切ない。元上司のベニーと奥さんのステファニーは成功して郊外に家を構えるけど周りの真性お金持ち(は共和党支持者)といまいち仲良くなれない。パブリシストのドリーはパーティーで事故を起こして過去の人になったけど、将軍を広告する羽目に。お金になればなんでもいいのか?悩みながら、でも成功すると仕事は楽しい。娘のルルはクールだけど「ならずもの」の命がけコンサートを成功に導く。デジタルを信奉しながら、手作りに惹かれたりする。変わっていくのか変わってないのか。でも変わっているよねやっぱり。アメリカに限った話じゃないけど、でもとてもアメリカっぽい。

(87) 動物農場(ジョージ・オーウェル):
これもGuardian'sで読んだんだけど、ちくま文庫だったし、新訳だと書いてあったのでepiで再読することにした。でも印象変わらないなー(当たり前)。前に読んだ時よりハッキリとこれはソ連だなーと思える。でもコロナ禍の今、他人事ではなく、全体主義に向かう方向に危機感を感じる。私権を規制された方がある意味ラクではあっても、規制されない方がやっぱり望ましい。何で規制されないと行動できないんだろ。しかし、そんな国民だったら滅んでしまった方がイイとも言えないんだよ、やっぱり。難しい。