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2021年4月27日

Guardian's 1000 (25)

さくさく進む読書。COVID19のせいで外出が減っているせいもあるが、実は体調も優れなくてお散歩もままならないため、読書が進んでいるのだった。どこまでいけるか Guardian’s 1000。でも250までは来たぞ。Crimeカテゴリは60%突破。

(241) 静かなる天使の叫び(R・J・エロリー/集英社文庫):
少女を狙った連続バラバラ殺人。犯人から女の子達を守ろうと少年たちはガーディアンを結成するが、個人的に守ってあげると約束した隣家の少女は放火により焼死してしまう。隣家の主人と不倫していたママは精神不安定になる。女性教師アレックスの励ましで立ち直りかけるけど、妊娠して結婚を約束したのに階段から落ちて母子ともに死んでしまう。傷心のジョゼフはNYに出て作家修行。図書館で出会ったブリジットはアレックスの面影。放火したのは私とママに打ち明けられて落ち込むも、ブリジットのおかげでやっと幸せに・・・と思いきや、ブリジットは連続殺人犯に殺され、ジョゼフが犯人として逮捕され、裁判の結果有罪となってしまう。でも友達や編集者が力になってくれて獄中で書いた手記が話題作となり、再審も通って無罪放免となる。ずっと事件を追い続けていた(ジョゼフ投獄中も事件は続いていた)保安官に再会し、そして・・・伏線はしっかり張ってあったのに全然わからなかった!推理小説としても上手いし、成長物語としても読める。どこまでも暗いけど一応最後は解決するし。

(242) 殺意(フランシス・アイルズ/創元推理文庫):
チョコレート事件と同じ人の別筆名作品。主人公が犯罪を語る、推理の余地がないタイプ。惚れっぽいビクリー医師は近所に越してきた若い女性マドレインに魅せられ、口うるさい妻の殺害を計画する。頭痛を起こす薬を飲ませて、頭痛を抑えるためのモルヒネを注射し、だんだんにこっそり自己注射する程の中毒にして、最後は過量投与。でもマドレインを口説いてたのを村のみんなが知っていたので、なんか怪しい、事故ではなくて自殺或いは毒殺ではないかと噂されてしまう。肝心のマドレインは他の男性と結婚。くやしー。前の浮気相手のアイヴィが魅力的に見えてきて、アイヴィの亭主とマドレインを一気に殺すために、腸詰菌(ボツリヌス菌)を培養して塗りつけたサンドイッチをランチ会に提供。食べた二人は目論見通り病気になる、が、死なない。でも警察がやってきて細菌培養器を見つけて逮捕されてしまう。もうだめかと思ったのに、警察が疑っていたのは、妻のヒ素による毒殺+二人の細菌による毒殺。しかし二人の病状はボツリヌス菌ではなく、亡妻の遺体を解剖してもヒ素は出てこない。無罪放免でラッキー!と思いきや、殺すつもりもなかったマドレインの亭主が腸チフスで死んだため、その殺人容疑で有罪になってしまう。えーっ。彼の食べたサンドイッチには細菌を塗りつけてないのに―!

(243) 緑衣の女(アーナルデュル・インドリダソン/創元推理文庫):
舞台はアイスランドのレイキャビク。今のように裕福ではなかった時代、ちょっとのことが生死を分ける厳しい冬。子供時代のトラウマを抱える大人たちと、その親の元で育つ子供たち。廃屋の解体現場で見つかった古い遺体は誰のもの?概ね想像はつくけど。DVの描写が正確でつらい。障害をもつミッケリーナが魅力的で救い。刑事の娘さんも回復するようだし、最後に小さく希望があるのがAJ好みだな。邦題はオリジナル(アイスランド語)から。英語題名の方が雰囲気あるけどね。

(244) 死の味(P・D・ジェイムス/ハヤカワミステリ):
教会の聖具室で浮浪者と共に死んでいた引退したばかりの政治家。自殺なのか他殺なのか?多くの関係者がそれぞれの理由で嘘をつく/隠し事をするので、捜査がなかなか前に進まない。ダルグリッシュ刑事カッコイイが部下のケイトがかっこいい!推理小説としても面白いし、イギリスっぽい。うっかり泊まってみた教会で聖痕が付いたら人生って変わるんだろうか。置いてきぼりのキャサリンがちょっとかわいそう。

(245) トゥモロー・ワールド(P・D・ジェイムス/ハヤカワミステリ):
作者同じでもSFカテゴリから。1992年に、2021年(今年だよ!)を舞台に書かれた近未来ディストピア。世界中で新たに子供が生まれないという設定。人類の終末としては、核戦争とか病原菌とかよりも悪くないのかもしれないけど・・・微妙。今書けば人手不足はロボットがだいぶカバーすると思うが、そういう不便はなくなっても、将来がないあてどなさはまた別のものだよな。科学という神に見放された(産まれない理由が不明で打つ手がない)状態もキツイと思う。嘆く旧世代としらけるオメガ世代。そんな中で新たなアルファが誕生する。これは希望なのか?希望かもしれないのに読後感が暗いのは、ありそうな気がしてしまうからなんだろうなぁ。

(246) 金曜日、ラビは寝坊した(ハリイ・ケメルマン/ハヤカワポケミス):
アメリカのちょい田舎、新任のラビは若いし学究肌で、信徒(一応)の問題も解決したりする優秀な男なのだが、ラビっぽくなくてイヤと思う人も多い。そんな中でうっかり寝坊して祈祷会をパスしたラビの車の中で若い女性の死体が発見される。容疑者はラビの他に二人。どちらもそれなりに怪しいのだが、死体の状況を今一つ説明できない。最後にラビが真犯人を上げると、あーそういえばちゃんと伏線が張られてたよ!全然気が付かなかった!推理小説としても上手いし、登場人物たち(真犯人除く)も魅力的で読んでいて楽しい。

(247) キム(キプリング/光文社古典新訳):
これはスパイものという分類でCrimeに入ったのかなぁ。TravelかSelfに入れるべきな気がする。アイルランド人の父を持つインド生まれのやんちゃな少年キムはラホールの「みんなの友」。ある日博物館の前で老僧に出会う。チベットから、罪業を洗い流す聖なる矢の川を探している老僧にお供することになる。お坊さんと腕白者の組み合わせは西遊記みたいだけど、このお坊さんは老僧だし、腕白少年は旅を通じて精神的にも知識的にも成長していく。導き手の一人はもちろん老僧なんだけど、キムの才能を見抜いたイギリス諜報機関の皆さんがいろいろバックアップしてくれる。旅を通じていろんな人に出会い、(イギリス人から見た)インドの他民族ぶりがうまく描かれている。山地を歩いて元気になる老僧は、しかし捨てた筈の怒りや復讐の衝動も取り戻してしまい落ち込む。でも旅の最後に病気になったキムを気遣う間に、キムを思うことで川を見つける。川を見つけたことでキムを救うことになる。幸せな老僧。元気が戻ったキムも願いが叶った老僧を見て幸せなハッピーエンド。こういうの好き。

(248) ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ(ジョン・ル・カレ/ハヤカワNV):英国の諜報機関に敵国ソ連のスパイが潜り込んでいるらしい。容疑者は4人。内部調査は難しいので、既に組織を離れたジョージ・スマイリーに捜査が任される。なんかゴロの良い題名は童謡からの借用。Tinker, Tailor, Soldier, Poorman, Beggerman。疑わしい5人に付けられた仮名。スマイリーはかつて容疑者の一人でベガーマンだった。題名からすると、Poorman=スパイなの?と思ってしまったが違うんだよ。偉大な二重スパイは捕まえてみるとただの男。諦観漂う描写がそうなんだろうなーと思える。いろんな人物が登場して、それぞれ良く書けていて面白いしうまい。「寒い国」よりこっちの方が好き。

(249) アラバマ物語(ハーパー・リー/暮らしの手帖社):
子供の頃から暮らしの手帖を読んでたので、実はこの本の存在は広告で知っていたのだ。でも、原題のTo Kill a Mockingbird がアラバマ物語とは思わなかったし、わかっても出版社を検索するまであの本だとは思わなかった。えー?あれって推理小説の類だったの??と思ったけどやっぱり違うな。Nation枠で扱うべきじゃないか。ま、犯罪は起きてるんだけどさ。アラバマの田舎町で、貧乏弁護士の父と4つ上の兄と暮らすスカウトはお転婆娘。町には黒人と貧乏白人が多くて、裕福白人はあまり出てこない。ある日婦女暴行の罪で黒人が訴えられ、父が弁護することに。黒人を弁護するなんて!と白眼視される一家。でも裁判所に行ってみたら、被告人のトムは片腕しかなく、被害者(白人の独身女性)を殴ったり首を絞めたりして強姦するのは難しく、むしろ被害者が被告人を誘惑してるところに激怒した被害者の父親が殴ったのでは?状況証拠は揃ってるのに陪審員判決は有罪。やっぱりみんな黒人がキライで信用できないらしい。原告の父は勝訴しても怒っていて、被告は勿論、弁護士も裁判長も殺してやる!と息巻く。口だけだろと思ったのに、学芸会の帰り道、豚の恰好でとぼとぼ歩いていたスカウトと兄を襲い、偶然か反撃か、とにかく犯人は死んでしまって一件落着。希望があるかどうかは微妙だが、BLMを気にする白人も昔から少数はいるのよ、という話ではある。

(250) マザーレス・ブルックリン(ジョナサン・レセム/ミステリアスプレス文庫):
NYの孤児達は孤児院を出てもフツーの生活には遠い。チンピラのフランク・ミナが孤児達をスカウトしてミナ・ファミリーを結成して、ちょい仕事、時々ヤバい請負をやる。今でいうと受け子?依頼人はイタリア系マフィアらしい。前は一緒に仕事をしていたフランクの兄はいなくなってしまう。そんなある日、誰かから呼び出しを受けたフランクは、見張りに子分を二人連れて出向くが、あっさりやられてしまう。主人公のライオネルは、トゥレット症候群(チック症の重症版)のため、疎まれやすいけど、フランクは面白がって仲間に入れてくれた。だからフランクの敵を討つために調査を開始する。奇矯な言動→意思疎通出来ない→バカ、と思いがちだけど、ライオネルはバカではない(天才探偵ではないし、利口な人なら調査なんかしない、って話はあるけど)。一人称で語られるので、自分の症状を理解し、コントロールしようと努力する様子がわかり、はーそうなんだ、脳って厄介だなと思った。推理小説としても面白いけど、ライオネルがとても魅力的だし、NYもらしく描かれていると思う。ただし日本人ヤクザ?についてはどーかなー。

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