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2021年3月12日

ハヤカepi文庫シリーズ (5)

週に1冊くらいの割で全体の6割くらいは読み終えたが、読まなくていい率が高くなってきた気がする今日この頃。

(9) ワイズ・チルドレン(アンジェラ・カーター):
ロンドンに住む双子の老姉妹は、伝説的イケメン舞台俳優の私生児で元ダンサー。75歳の今でも素敵な脚の持ち主。今でも乙女心は持っているけど波乱の人生を通じて、賢い子供たちになったところ?顔や声は良くても頭や心はどうだか?のパパ、優しいけど理解不能の行動派の叔父、二人を巡る女性たちや子供たち、その恋人たち。二人を育てたグランマもカッコイイが、パパの最初の妻レディ・Aがイギリスっぽくていいな。そこの家のナニーもイギリスぽい。家柄の差ってハッキリとあるようで、案外曖昧だったりするんだな、と納得。

(19) カメレオンのための音楽(トルーマン・カポーティ):
カポーティの3冊はノンフィクション・ノヴェルというのだそうだ。自分の経験をベースにした短編集。私小説というには全然ドロドロしてない(私小説=ドロドロって誰が決めたんだ)。いろいろあってもどこかお洒落な仕上がり。有名人の話も多い。良く描かれてることはいいけど、そうじゃないやつは実名じゃなくても本人から怒られそうだよな。訳は野坂昭如!ちゃんとNYぽく特に問題なく読めるが、村上春樹訳ならまた印象が変わるのかもしれないね。

(36) 犬は吠えるⅠ(トルーマン・カポーティ):
「ローカルカラー」はいろんな都市での出来事。題名が街になっているやつはとくにそれっぽい。パリのコレット宅を訪ねた「白バラ」は、バカラの文鎮をもらってコレクターになってしまう話。『自分でも大切にしているものでなければ贈り物としてさしあげたってしかたないでしょう?』コレットかっこいい!「ローラ」はシチリアが舞台。貧しい家主の娘がクリスマスにくれたのは羽を切ったカラスの雛。カラスも鳥も嫌いだった筈が、逃げ出されてみて愛着に気づく。戻ってきたカラスのローラと2匹の犬と幸せに暮らしてたのに、婚約者が事故に遭ったのはカラスのせいだと娘が言いだして追い出される羽目に。ホテルにも泊まれないし放浪の挙句、ローマのアパートにたどり着く。バルコニーでのんびり暮らすローラにファン(老人)も出来たのに、ある日猫がやってきて、羽を広げたものの飛べないローラはそのまま落下して、たまたまそこにいたトラックの上に。もう会えないの。「観察記録」はいろんな人を描いたスナップ。コクトーとジッド、ボガート、モンローはわかるが褒めてるんだがけなしてんだか。インタビュー風の「自画像」は描かれたいことが良く書けている。

(37) 犬は吠えるⅡ(トルーマン・カポーティ):
黒人ミュージカルを上演するために冷戦下のロシアを訪れる劇団。「砲声絶える時詩神の声聞こゆ」は、ソ連高官の歓迎演説から。歓迎されてるんだかされてないんだか。理解はされてないみたい。いろいろと不便だし横紙破りもたくさん。でも劇団メンバーも負けてないのだった。「お山の大将」はマーロン・ブランドを描いたもの。日本で「サヨナラ」なる映画を撮影中のマーロンに都ホテルで取材。マーロンは親分肌というか自分だけを愛する子分に囲まれていたい孤独な男。気分が続かないので自分でも何をしたいかわからない。良く描けているのだろうと思う。

(20) シンプルな情熱(アニー・エルノー):
50前の地位あるバツイチ女性が恋におちてしまった自分をシンプルに書いたもの。恋ってこういうものだよね、あるあるエピソード満載。ストーリーらしいものもないし、ほんとにシンプルなんだけど、これ好き。訳者あとがきにこの恋について「いわゆるロマンスからは程遠い、激しくて単純な肉体的な情熱」と書いてあってびっくり。ぽかんと口が開いてしまった。肉体関係の有無にかかわらず、こういう激しい情熱こそが恋だ、と思うんですけど。この情熱から程遠い「いわゆるロマンス」って何?それは恋愛ごっこであって恋じゃないだろ。ぶつぶつ。作品は、「今の私には、贅沢とはまた、ひとりの男、またはひとりの女への激しい恋を生きることができる、ということでもあるように思える。」という文章で終わる。確かにそうだよね、と思う。ただし、そんな贅沢をもう一度したいか?と問われると断然遠慮するけどさ。

(27) レ・コスミコミケ(イタロ・カルヴィーノ):
SFというか壮大な宇宙創成ファンタジーともいえるがただの駄ボラな感じがぬぐえないのがカルヴィーノのいいところ(笑)。パスワード的な人物(?)名は縦書きは無理で訳者は悩んだろう。中では「見たゾ!」が今的で面白かった。

(42) 恥辱(クッツェー)はGuardian's1000で済

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