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2018年9月19日

光文社古典新訳シリーズ(19)

古典新訳は前回から1年半ぶりの更新・・・。おかげで未読がたくさん貯まってしまいました。もうすぐ200冊だし頑張って読まなきゃ。読みやすい本が多くて好きな本も多かった今回の10冊。

(181) 論理哲学論考(ヴィトゲンシュタイン):言いたいことは良くわかんないけど、これ面白いぞ(笑)。まずなんと横書き!章立てからして論理的!論理的だとは思うがこれが哲学なのか?心理学や宗教に近くなってしまった哲学が多いのでアンチテーゼなのはわかるのだが。AIの哲学というか思考方法はこんなだろうなと思う。上手く説明できないけどなんか面白いよ。薄いし読むべき。

(182) 戦う操縦士(サン=テグジュペリ):戦闘機乗りとしての実話ベース。飛行士だと操縦士じゃない人も含むのね。確かに宇宙飛行士って操縦士だけじゃないもんね。敗北濃厚のフランス、偵察飛行に何の意味があるのかと思いながら飛ぶが敵機に囲まれて戦う意味を見出す。「わたしは戦う。『人間』のために。」 『国家』でも『大衆』でも『集団』でもなく、『人間』のために。『人間』は個々人ではないが、個人の総和でもない。大聖堂を語るのに石材を語っても意味がないように。ううむ、確かに。石材あっての大聖堂ではあるが、大聖堂により石材が生かされるってのはあるよなー。窮地の最中に、顔も覚えていない子守のポーラと会話するシーンが秀逸。しかし、ドイツってそんなに強かったのな。アメリカが参戦しないと怪しかったのか。真珠湾攻撃って誰が決断したんだ、責任者出てこい!

(183) ケンジントン公園のピーター・パン(バリー):ピーターは永遠の7日歳!こういうの好き―。パンはパン神のパンという解説も目テン。ちなみにウェンディが出て来るのは「ピーターパンとウェンディ」で別物(後日譚)。スティックボートの実態が謎。海まで行ってしまうステッキ―なボート。気になる。筏のことかな?

(184) ボートの三人男 もちろん犬も(ジェローム):前に丸谷訳で読んだ。こんな本だった。たぶん丸谷訳の方が好き。でもかなり古い訳だから新訳が出るのはいいことだ。光文社古典は解説が充実してるしさ。カワイイ地図もある。出て来るお店やなんかが2017年現在営業してます。とかの情報もあって、新訳はこうじゃなくちゃね、と思う。でも副題はどうかなぁ。オリジナルに近いとは思うが、「犬は勘定に入れません」の方がユーモアがあって好き。

(185) ヒューマン・コメディー(サローヤン):第二次大戦中の家族を描いたもの。電報配達で家計を支えるホーマーは健気、ちびのユリシーズは可愛い。アメリカにはいろんな国の人がいて、そしてみんなアメリカ人だ。サローヤンは「我が名はアラム」を松丸文庫で読んだんだな。しかし一番びっくりしたのは、カモナマイハウスがアルメニア民謡にサローヤンと従兄弟が作詞したものだという解説。ホーマーはよくキャンディーをもらってるがアルメニアってそういう文化なんだね。いいな。

(186) オリエント急行殺人事件(クリスティ):二度目か三度目。解説のダメ出しが親切。こんなに国際的なのはアメリカだからか。なるほどね。トリックとしては今一つだが映画にしたくなる気持ちは良くわかる。

(187) にんじん(ルナール):子供の頃読んだと思う。でもこんなに暗い話だったか?母親にいじめられる末っ子のにんじん。姉兄もいじめる。両親の不和が原因の哀しい家庭。ルナールはやっぱり博物誌がイチ押し!

(188) この人を見よ(ニーチェ):なぜ私はこんなに賢いのか、利口なのか、良い本を書くのか。ちょっと閉口してしまう見出しだけど、書いてあることはそんなに高圧的じゃない。必然を必然のまま受け入れる。人間の幸せは哲学やキリスト教じゃなくて健康であること。うーむ、なんか病人らしい発想かも。哲学よりも健康な生活が人生を救う。まーねー。

(189) 薔薇の奇跡(ジュネ):少年院から刑務所へ。非行青少年群像同性愛付き。思考が行ったり来たりというかグルグルして、章立てもなくて一緒にグルグルしてしまう。これ一気に書いてるのかね。意図して書いていたらすごいのだが、わかりにくいだろ。

(190) 芸術論20講(アラン):音楽、演劇、ダンス、建築、彫刻、絵画・・全てに共通する芸術の基本、みたいなこと。「芸術の体系」よりはマシだけど、何を言いたいのかわかりにくいことに変わりなし。

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