(81) 道徳の系譜学(ニーチェ):現状、光文社古典には3冊のニーチェがある。私は考えなしに借りたので、執筆順とちょうど逆で最初にこれを読んだ。カントよりは遥かに読みやすいがでもやっぱり哲学って難しいな。ヨーロッパ人にとってキリスト教を否定するのはそんなに大変なことなんだな、と思った。
(82) 善悪の彼岸(ニーチェ):これオススメ。他の2冊は読まなくてもコレさえ読めば(笑)。文法を受け入れるのは宗教を受け入れるのと同じで思想の根本、という下りに、そうか宗教ってそういうことかと突然納得してしまった。日本が文化的に曖昧をよしとするのも、神様の姿が曖昧なのも、日本語の文法に主語が省略されることと呼応するんだ。考えるって結局言葉なんだものね。日本人にとって善悪が混沌とした「清濁併せ呑む」がなんでもなくても、欧米人には考えにくいことなんだ・・・
(83) ツァラトゥストラ(ニーチェ):これは学生の時に一応読んだ。「ツァラトゥストラはかく語りき」ていう題で。たぶん新潮文庫。当時も意味わかんない・・・と挫けながら読んだと思うが、新訳でもやっぱり何を言いたいか判りにくいです。善悪の彼岸を先に読んでなかったら絶対に挫けたと思う。これを判りやすく書き直したのが善悪の彼岸だそうなので、あっちだけ読めば・・・(笑)。でも、「ノー!ノー!もう一度ノー!」に代表される踊る文章は一読の価値あり。ドイツ語眺めてみたいかも(読めないけど)
(84) ムッシュー・アンチピリンの宣言(ツァラ):題名からSFの類かと思ってた。ダダイズムの宣言。ニーチェと同時期に読めたのは幸いでした。キリスト教や哲学を否定したニーチェのニヒリズムに対して、否定することすら否定するダダ。ダダ=Yes,Yesの意味じゃないかと訳者あとがきに書いてあったけど、絶対そうだと思う。前述のノー!ノー!に対向するダー!ダー!なんだよ。人生の殆どは言葉遊びだ(正確な表現は忘れたけど)というくだりに感動。そうだよなぁ、確かに考えてみると人生において大切といわれているものの多くは実際は言葉の遊びだったりするよなぁ・・・
(85) フランケンシュタイン(シェリー):フランケンシュタインって怪物の名前じゃなくて創造者の名前だった!怪物の哀しさというか、ストーカー物語な感じ。物語より怪物の造詣が面白かったのでみんなそっちに走っちゃったのだろうな。なんだこんな話だったのか、と思った。
(86) 箱舟の航海日誌(ウォーカー):ノアの箱舟の航海日誌。童話なんだけど無駄に暗い(笑)。そうか肉食は箱舟の後にはじまったのか。確かにノアを選んだ意味ってわかんないよな。洪水でいろいろ滅ぼした後に何かいいことがあったようには思えないし。
(87) 知への賛歌-修道女ファナの手紙(ソル・ファナ):詩と手紙。修道女には見えない。才気あふれる美少女がそのまま年を取った感じ?この人がエッセイ書いたら面白かっただろうなぁ。枕草子みたいに。でも最後は悔い改めて修道女らしく亡くなられたのだそうだ。残念だ・・・
(88) 自由論(ミル):エジプト革命と同時期に借りたのでしみじみ読んだ。人は自由が必要で、それは誰にも押さえ込めないんだ。他人に危害とならなければ、何しても自由、正しいかどうかじゃない、という意見に賛成。イギリスは西欧の他国に較べて非寛容であるらしいが日本はもっとだろうな。でも日本より不自由な国がまだまだあるんだと思う今日この頃。
(89) 酒楼にて/非攻(魯迅):変わっていくようで変わらない時代。激動の時代だからこそ変わらないものへの不快感と愛着。今の中国もある意味こんなかな。掲題作の「酒楼にて」や「祝福」も痛いけど、「愛と死」が切ない。いや切ない愛が書かれているわけじゃなくて、そういう愛が長続きしないことが切ないのだった。
(90) 芸術の体系(アラン):ちっとも体系になってないような・・・(笑)。芸術ってやっぱり高尚なものなのだと思った。なんでも「カワイイ」で済ましちゃだめよね。美学というのは難しい。フランス人はなんでも「キレイ」で済ませるのかと思ったけど、美学となるとそうでもないのな。でもイタリア人は済ませる気がする。いいじゃんかキレイなんだから、体系なんてどうでも・・・
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