ページ

2017年5月9日

光文社古典新訳シリーズ(18)

読み直すシリーズの追い込みをやってたのと、100冊シリーズを読み始めたのでスピードが落ちてたのは認識していたが。前回古典新訳をアップしてから1年近く経ってる!!びっくりだ。
今回は、各国「らしい」ものが多かったです。

(171) ヘンリー・ライクロフトの私記(ギッシング):2016年AJベスト受賞作。半端な貧乏作家が親切な友人の遺産をもらって優雅に暮らす英国の田舎生活。素直にエッセイだと思う。ところが・・・田舎生活の描写も魅力的だが現実とのギャップがしみじみ泣ける。光文社古典で読んで良かった。

(172) 幸福な王子/柘榴の実(ワイルド):「幸福な王子」ってこんな話だったのか。燕も可哀そうだが、鉛の心臓がはりさける王子も可哀そう。神様に救われてよかった。「星の子」も読んだことある気がする。立派な王様になったが3年で死んじゃうなんて。一番気に入ったのは「漁師と人魚」。魂は要らないが恋人のために心は必要って。原語が知りたいかも。愛は知恵より金より悪事より善事より強い。うむ、恋している間は恋が一番強いな確かに。

(173) 失われた世界(アーサー・コナン・ドイル):南米の奥深くに恐竜が残った台地があって。そこには猿人と人類が戦っていて。映画「ロスト・ワールド」の原作。登場人物みんなすごくイギリス人ぽい。ジョン卿かっこいい。

(174) 二都物語(ディケンズ):前に読んだはずだけど、もっと暗い話だったような・・・普通に面白いじゃん。伏線は最初からバレバレだけど。ロンドンとパリ。イギリスと(イギリスから見た)フランス。遠いようでやっぱり近いのな。貴族階級にとっては。

(175) ピノッキオの冒険(カルロ・コッローディ):懲りない少年ピノッキオ。ものすごくイタリア人ぽい!!ディズニーとはだいぶ違う。最初は救いのない話だったのね。笑える。

(176) ウンディーネ(フーケ):オンディーヌ(ジロドゥ)のドイツ語版というか原作というか。ジロドゥの方が好み。ドイツでは水の精もルールを守るのな。

(177) 暦物語(ブレヒト): カレンダーに書いてあるような「ちょっといい話」のイメージなんだって。「子供の十字軍」が痛い、平和な国はいったいどこに?(泣)兄は飛行士だった、の兄が征服した土地も悲しい。

(178) クレーヴの奥方(ラファイエット夫人):「クレーヴの親方」だと思いこんでいてなかなか見つからなかった(笑)。貴族の令嬢が熱愛されて結婚した後に、他の未婚男性と恋をする。でもプラトニックな内に必死に諦める。諦める理由が、いずれ捨てられるからって。正しいけど。

(179) 白夜/おかしな人間の夢(ドストエフスキー):「白夜」、ロマンチックだ―。失恋した少女と出会った青年との恋というか魂のふれあい?こういうのあるよなー。心に沁みる友情だよなー。SFチックなおかしな人間の夢は少し痛い。幸せよりも幸せの論理が大事。あるある。論理ではなく無の方が幸せ、あるある。

(180) 二コマコス倫理学(アリストテレス):学生たち向けの授業ノート。選良意識の匂いがするなー。古代ギリシャだから仕方ないのかもだけど。哲学とか政治とかは一握りの選良がやればいいこと、っていうのは実は正しいのかもなぁ。でもなぁ。女だって奴隷だって才能がある人はいると思うよなぁ。ま、そういう「本当に善い人」の生き方はお任せするとして、「普通の善い人」の幸福は、中庸にある、というくだりは気に入った。昨日より今日、今日より明日と右肩上がりを目指すのではなく、超過でも不足でもない「ちょうどいい」に幸福はあるのだ。そーだよなー。ほんとにそう思う。

0 件のコメント: