春頃から毎週1冊ずつ読んできた修道士カドフェルシリーズをとうとう全部読み終えてしまった。イギリスの推理小説なのですが、舞台は中世の田舎(田舎の中では街なんだけど)にある修道院。史実を踏まえつつ、しかし史実の部分を推理小説(歴史小説)にしたものではない。史実はあくまで背景。でも王座を争う戦いが、庶民に/貴族に/聖職者にどんな影響を与えるか/与えないか、いろいろ考えながら読めるのが楽しかった。主人公のカドフェルは壮年のおじさん(当時からするとおじいさんかも)だけどカッコイイし、脇役はもっと若くて素敵なお兄さん/お姉さんがたくさん登場します。
英国で映像化され、かつてNHK-BSでも放映したことあるらしい。本としてはたぶんもう売ってないと思うので、興味ある方は図書館にどうぞ。
1) 聖女の遺骨求む:最初の本は歴史背景は全くなし。修道院にまつわる話。神がかりなことも起こるのが中世らしくてマル。
2) 死体が多すぎる:AJのイチ押し。王位を争う一方の雄、スティーブン王がシュルーズベリ城を陥落(1138年)という史実を踏まえたもの。陥落したお城の中に戦いとは関係のない遺体がひとつあって・・・。ここで登場するヒュー・ベリンガー、敵か味方か途中までわからないのだが、最後は無闇にカッコイイ。
3) 修道士の頭巾:1138年12月の設定。犯人はすぐ判ってしまうのだが、新院長ラドルファスがこれまたカッコイイ。
4) 聖ペテロ祭の殺人:1139年7月。これも容疑者が少なすぎてすぐ判っちゃうんだけど。王冠を争う戦いの陰謀の手紙にまつわる犯罪。こういうことはあったのだろうなぁ。
5) 死への婚礼:1139年10月。当時の治らぬ病、らい病に侵された元十字軍の英雄が悪を正して黙って去っていく。
6) 氷の中の処女:1139年11月。貴族の姉弟を連れて逃げ落ちる途中だった修道女が殺されて川の中で凍っている。これは容疑者複数でそう来たか!て感じ。姉弟を迎えに来た、すこぶる付きでカッコイイ青年オリヴィエがなんとカドフェルの隠し子!
7) 聖域の雀:1140年5月。ずっと家のために尽くしてきた行かず後家。弟がお嫁さんをもらって家事も取り上げられてしまい・・・悲し過ぎる結末。
8) 悪魔の見習い修道士:1140年9月。ストレスのために夢遊病になり夜中に徘徊するために悪魔と言われてしまう見習い修道士。そのストレスの元になった殺人の、犯人を庇う人を庇う人を庇う人。美しい七宝焼きから足が付く。七宝焼きってイギリスにもあるのか。
9) 死者の身代金:1141年2月。リンカーンの戦い直後。スティーブン王は捕虜になってしまう。リンカーンで重症を負ったヒューの上官プレストコートはなんとかシュルーズベリに戻ってくるが、ここでとどめを刺されてしまう。推理小説としても面白いし、史実が胸に迫ってくるのも二重マル。
10) 憎しみの巡礼:1141年5月。聖ウィニフレッド祭で脚なえの少年が完治する奇跡が起こる。旅で出会った巡礼のふたりは実は憎しみから同行していて・・・。物語の背景に、断然有利になった筈のモード女王がロンドンで市民に拒絶されて逃げ帰った様が描き込まれている。
11) 秘蹟:1141年8月。秘蹟=結婚の秘蹟、というのに気づくとネタバレなんだよなー。なかなか感動的な物語ではあるが推理小説としてはどうか。女王の一番の臣下、異母兄のロバートが捕虜になってしまう。
12) 門前通りのカラス:1141年12月。厳しすぎる教区司祭の死。犯人はいない、ていうかいないことにする。こういうことってあるんだろうなぁ。スティーブン王釈放される。
13) 代価はバラ一輪:1142年6月。題名は、修道院に屋敷を貸す代わりに代価がバラ一輪、というところから来ているんだけど、ロマンチックな結末を期待して間違いなし。この時代の財産を持った未亡人というのはみんなから狙われて面倒だったのだなぁ。
14) アイトンフォレストの隠者:1142年10月。絶対タイトルからネタバレだと思う。修道院に預けられていた少年が荘園を継ぐためにいきなり結婚する羽目に。相手のお嬢さんもガキと結婚はしたくなくて・・・スティーブン王、モード女王を包囲。もうひといきか。
15) ハルイン修道士の告白:1143年1月。遠い昔に妊娠中の恋人を毒殺したことを告白、彼女の墓前に参ろうとするが・・・死んでないことはすぐに想像付くんだけど、理由がちょっとびっくり。娘の恋人に恋するかな普通。スティーブン王はせっかく包囲した女王にあっけなく逃げられて元の木阿弥。
16) 異端の徒弟:1143年6月。三位一体を否定したために異端と言われてしまう。美しい物に魅入られた人が犯人なのだが、これが結構誰だかわからない。
17) 陶工の畑:1143年8月。三角関係に悩んだ奥方はとうとう愛人に賭けを申し込んだのでした。ってそんな結末ありかよ。
18) デーン人の夏:1144年7月。ウェールズ語が達者なカドフェルが元弟子のマーク修道士のお使いに同行すると・・・デーン人とはデンマーク人のことで、つまりバイキング。推理小説としてはいまいちだけど、物語としては面白い。バイキングってこんなだったのか。
19) 聖なる泥棒:1144年8月。第1作でもらってきた(ことになっている)聖ウィニフレッドが洪水のどさくさに紛れて盗まれてしまう。でもすぐに見つかり無事に帰ってくる。王位争いは泥沼化。
20) 背教者カドフェル:1145年11月。ロバートの息子が突然スティーブン王側に寝返る。それに伴い、オリヴィエが捕虜になり居所不明に。カドフェルは服従の誓いを捨てて我が子を救い出しに出掛ける。作者の死により、これが最終回となってしまうが、次の作品も書きかけていたのだとか。でもこれが最後になるかもと思いながら書いたのではないか、と思わせる大団円である。とはいえ、王位争いの方は泥沼のまま。これどうやって決着したんだろう。誰か教えて。
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