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2020年12月4日

ハヤカワepi文庫シリーズ (3) 

ハヤカワepi文庫シリーズの第三弾は、トニ・モリスンとコ―マック・マッカーシーの固め読み結果となっております。グリーンやイシグロと違って、二人とも私の好みとは言えないのだが、読んで損はない本が多いよ。

(56) 越境(コ―マック・マッカーシー):
ニューメキシコからメキシコへ馬でふらっと行ってしまうビリー。放浪から帰ると父と母は殺され、弟はよその家に引き取られている。弟を連れ出して盗まれた馬たちを取り戻しにまたメキシコへ。うまく取り戻せたと思いきや復讐されてしまう。バラバラになって逃げて帰るも弟が戻らないので再度メキシコへ。瀕死の傷だらけの弟を助けると、前の旅で別れた少女を連れ戻してほしいという。連れ戻したら二人で出て行ってしまい・・・仕方ないからまたアメリカに戻って入隊しようとするも健康上の理由で断られ、そうこうしている内に弟が死んだと言われてまたまたメキシコへ。埋葬されていた遺骸を掘り出してアメリカに連れ帰る。相変わらず暗い小説だ。闘う少年たちも匿ってくれる大人たちも強いし健気なんだけど、全体的に暗くてAJ好みではないんだよ。アメリカっぽいとは思うんだけどさ。

(58) 平原の町(コ―マック・マッカーシー):
「すべての美しい馬」のジョン・グレイディと「越境」のビリーが出会う。老いたビリーが描かれるエピローグは現代。禅問答的。相変わらず暗くて好みではない。

(55) スーラ(トニ・モリスン):
常識的な家庭に育ったネルと自立心の強い女系家族のスーラは何故か仲良し。秘密も共有する。家を出たスーラがふらっと帰ってきて、あちこちの夫に手を出しては捨てて、街の嫌われ者になる。友達だったネルも亭主を寝取られ&逃げられて敵に回る。スーラを魔女扱いすることで結束していた街は彼女の病死により崩壊していく。自分のことしか考えていないスーラはそのことを隠さない。愛とか気遣いって案外偽善だったりするもんなー。でも偽善でもあった方がよかったりするんだよなぁ。亭主がいなくなって寂しいと思っていたネルはある日、スーラを失ったことが寂しかったことに気づく。うーむ。女の友情って難しい。男の友情も難しいのかもだけど。

(59) ジャズ(トニ・モリスン):
舞台は珍しくNY。電車で踊りながら上京した若いカップルは中年になりなんだか倦怠期。ジョーは若い女に入れあげて、しかし結局拒否されて彼女を殺してしまう。殺された女ドーカスの葬式にやってきた妻のヴァイオレットは遺体に切りつけて「バイオレント」と呼ばれるようになる。ジョーもバイオレットもドーカスも、その親や祖母・叔母も、それぞれの事情を抱えて、でも希望を持ってアメリカ国内を彷徨う。NYシティはそんなみんなを惹きつける。惹きつけて離さない。なんでここにいるんだっけ?地に足のつかない都会生活。同じ毎日の繰り返し。でも救いがないわけじゃないのよ。夢の国アメリカ、とは言えなくてもさ。

(61) パラダイス(トニ・モリスン):
話が時系列で進まないので読みにくい・・・登場人物の家族図が最後にあるのに読み終わって気づいた。せめてこれが先頭にあれば、ぶつぶつ。肌の黒さゆえに黒人からも差別された黒人たちの誇り高い開拓村。差別された側の方が案外差別意識が強くなったりする。どこでも弱い者いじめはありうるのだった。はみだし者の女たちの連帯が魔女っぽいと迫害にあう。しかしその後何が起こったのか女たちはいなくなってしまう。いなくなっても、いなくなってはいない。伝統は変わっていく、それがイイことなのか悪いことなのか?変わることは悪いことではないと思う。でも変えればいいってものでもないよね。深い、のだが、ストーリーが込み入ってることもあってちょっと読みにくいなー。ビラブドの方が好き。

マッカーシーの(4)すべての美しい馬、(60)ザ・ロード、(94)ブラッド・メリディアン、トニ・モリスンの(6)青い眼が欲しい、(54)ソロモンの歌、(57)ビラブドはGuardian'sで済。

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