ページ

2019年6月4日

ゼロ年代の50冊(9)

あと5タイトルまで来たんだけど、中旬から長めの治療入院に行く羽目になったので、6月中には終わらないかなぁ。入院すると読む時間はたくさんできるけど、ハードカバーを何冊も持っていくのは面倒なんだもの。文庫本で用意できる新シリーズを並行して開始してしまおうっと。

(41) アメリカのデモクラシー(トクヴィル/岩波文庫):19世紀に書かれたフランス貴族が見た新生アメリカ。古典新訳。アメリカ以上のアメリカが描かれていて当時も今もアメリカ人に人気なんだとか。結局民主主義(大衆主義)に向かうしかなかったんだろうなぁ。人は平等を熱望するけど、自由はそうでもない。平等が行き過ぎると大人物が出てこないし、政府の統制が細かくなるほど国民は幼児化する。民主主義のデメリットを防ぐのは結社と新聞。自治を手放すことで人は政治から遠ざかる。現代にも当てはまる部分が多く耳が痛いが、当てはまらない部分も多いので今読んでもちょっと。当時は画期的だっただろうけど。

(42) シンセミア(阿部和重/朝日文庫):後半は怒涛の展開に止められずに読んだ。だから面白くはあるのだけど・・・。途中は救いがあるかに見えたんだけど結果的に皆無で、AJの好みではないなぁ。

(43) 国家の罠(佐藤優/新潮文庫):外務省職員かつ鈴木宗男の懐刀が「国策捜査」により有罪になった話。素直に面白い。川上弘美の後書きが良いので文庫で読むのをお勧め。リアルタイムで見ていた事件なので、なるほどーと思った。川上弘美も書いているように鵜呑みにするのはいかんと思うけど。一番なるほどーと思ったのは、「国策」は、黒幕の陰謀とか組織保存本能とかではなく(きっかけはそうだとして)、「国民」の雰囲気だ、ということ。マスコミが助長は出来ても、本当に「国策」を決めてるのは案外国民なんだな。太平洋戦争に向かったのも、いつまで経っても「少年のまま」なのも、国民の総意なんだ。どうすりゃいいんだ?SNSの発達でマスコミによる世論操作も難しくなって、頼むは教育か或いは宗教?どうすんだろうな。

(44) 日米交換船(鶴見俊輔、加藤典洋、黒川創/新潮社):太平洋戦争開始後、アメリカや南米他「敵地」にいた日本人を、日本や中国他にいたアメリカ人と交換した船が出た話。外交官や記者、駐在員、学生・・・北米にいた人は総じて民度が高い印象。乗換地点で雰囲気(或いはみんなの意識)が変わったというのはなんか想像できるな。戦争は面倒だ、としみじみ思う。読んでいる最中に著者の一人である加藤典洋の訃報が天声人語に出てびっくり。

(45) 昭和精神史(桶谷秀昭/文春文庫):昭和といいつつ戦後(昭和22年位)まで。様々な文化人・知識人の言動を取り上げている。幕末~明治初期と戦後には精神の断絶がある。とはいえ、日本人の付和雷同というか長いものに巻かれろ精神は変わらない。マオを読んでたおかげで戦中の中国の動きも良く理解できた。大日本帝国だけが悪いわけではないがしかし、余りにも場当たりな情勢論。令和になっても変わる気配ないけど。確かに日本には「アジア」の視点が欠落したままだな。これもどうあるべきなのか。教育?マスコミ?

0 件のコメント: