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2013年12月29日

光文社古典新訳シリーズ(13)

前の職場は図書館が激近で、しかも光文社古典が確実に入っていて実に便利だったのだが、今度の職場はそうはいかないのだった。一番近い図書館までバス停二つ分。家の近所の図書館でちまちまと借りるもスピードがガタ落ち。まいいけどね、あまり早くても刊行スピードに追い付いちゃうしさ。

(121) 羊飼いの指輪(ロダーリ):既存の童話ベースの短編が20。それぞれに3つの結末案付き。ハッピーエンド風と救いのないヤツと肩すかしと言うパターンが多い。自分で鼻を切るピノキオは笑える。アタマいい。笛吹と自動車はローマぽい。地下道で解決はちっとも夢がないと思うが、ローマの人にとって地下道や地下鉄はファンタジーなんだろう。

(122) ブラス・クーバスの死後の回想(マシャード・ジ・アシス):リオ(ブラジル)の不倫の恋の話。恋バナとしては普通なのだが、表現の仕方が新しいっていうか面白い。絵画的っていうの?前衛的?「死後の回想」という設定自体も不思議だよね。なんで死後にしないとなのか良くわかんないけど。

(123) 緋文字(ホーソーン): アメリカ入植時代の話。不倫を乗り越えた若妻と、恨み続ける夫と、苦しみ続ける牧師さん。そして無邪気な少女パールちゃん。女って強い(笑)

(124) ビリー・バッド(メルヴィル):松丸文庫で「白鯨」を読んだばかり。なんで白鯨じゃなくてこれかね?ビリーバッドは遺作なのだそうで。天涯孤独の無垢な好青年、ハンサムセイラーが腹黒い先輩をうっかり殴り殺して船で絞首刑になるイギリスの軍艦話。ノアの反乱とか強制徴兵とか、ホーンブロワーとかのおかげで知ってる知ってると思って読むので良かったけど、これ面白いか?

(125) 絶望(ナボコフ): 2冊目のナボコフ。相変わらずロシアぽくないっていうか舞台はドイツ。一人称の推理小説風。伏線が見え見えで推理小説にはなってないけど。ドストエフスキーの犯罪小説に対するアンチテーゼなのだそうだ。なるほど。饒舌で読みにくかったが、そう言いながら2日で読んだな。解説を読んでようやく、そゆことかーと思った。

(126) 死の家の記録(ドストエフスキー):体験に基づくシベリア監獄日誌。題名ほど怖くはない。牢獄という環境についていろいろ考える。そうなー、牢獄じゃなくても、認められる/信頼されるというのは人として重要なことだよな。クリスマスのお芝居の場面が一番面白かった。貴族様と「民衆」はこんなに遠かったのなー。監獄に入ったから民衆が書けるようになったと。なるほど。

(127) サロメ(ワイルド):少女のサロメが魅力的。聖書とそんなに違わないような?でもカエサルとの関係はこれを読んで急に理解した。旧約聖書って神話ばっかりじゃないんだった。それにヘロデ王ってひとりじゃないのね。解説を読んでかえって混乱。サロメに出てくるのは日本語的には「ヘロデ大王」と呼ぶらしいです。

(128) ご遺体(イーヴリン・ウォー):ある意味推理小説。ま、推理する余地はないんだけどさ。結末が結構哀しい。高級墓地に勤める彼女と、高級ペット墓地に勤めるお調子者の彼。

(129) オペラ座の怪人(ガストン・ルルー):大筋は知っていたが、作者は黄色い部屋の人だったのかー。ロマンチックではあるが、推理小説としてはからくりの説明が薄すぎで荒唐無稽だし、こんな最後でハッピーエンドと言えるのか?エリック君の哀しさはわかったけど。

(130) 消しゴム(ロブ=グリエ):推理小説のような不条理小説のような社会派小説のような。公房さんに似ているのだそうだ。そうか?恩田陸に似ている気がするんだけど。こういうの最初に書く人ってやっぱりえらいよね。読んでいて面白かった。フランスの工業港町。ありそうな風景。どこにもない消しゴム。理由があるんだかないんだか、運命なのか偶然なのか。

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