地震で倒れたのを教訓に、もっと低い書棚の導入を検討しているのですが、まずは今あるものの整理から、その前に実家にある本の類を引き取って・・・っていったいいつ導入できることやら(笑)。
そんな「整理」の中で、主に学生の頃に書いていたノートが大量に見つかり、裁断処分の最中ですが、先日「読書ノート」を見つけた。そういえばこんなもの付けてたな、と思いながら読んだんだけど・・・笑える。昔からこんな性格だったのだなぁ。
1冊は高校生の時のもので、太宰治と芥川龍之介の固め読みが入っている。そうそう最初の固め読みは太宰だったんだよ。最初は「治さん」と呼びかけていて、そのうち「修治さん(太宰の本名)」、最後は「修治君」になっていました。もー、女子高生ってやつは・・・。題名が書いてあるだけとか、最後の方には「この間に安部公房シリーズがあったんだけど」とか書いてある場所も。読書の記録になっていないじゃんか。
もう1冊は大学生の頃。こちらには点数と採点基準が書かれていて、
・100点:すごい!さすが!これっきゃない
・95点:これ買う。愛読書にしたい。
・90点:近頃稀にみる名作
・85点:とてもよく書けています
・80点:あともう少しです
・75点:よく書けているんだけどいまいち
・70点:もう少し頑張りましょう
・65点:次の作品に期待します
・60点:ま、無難なんじゃないですか
・55点:もう少しうまく書けないんでしょうか
・50点:期待しません。こんなものでしょう
・40点:読了するに値しなかった
・30点:読まなければ良かった
・30点以下:何でこんなのを本にするのよー
・0点:燃やしてしまいたい
なんてエラそうなんでしょうか(笑)。15冊しか書いてないけど、最高点は92点。最低点は50点でした。
全文をここに再録する気にはなれないけれど(恥ずかし過ぎ・・・)、裁断すると二度と思いだせないので、面白い範囲で記録。カッコ内は現在の追加感想。
右大臣実朝:なんと文才のあること。実朝のセリフがカタカナなのもいい。戦争に向かっていた時代背景もあるのでしょうか。破滅を受け入れる無邪気な覚悟、というか・・・。 同じ本に入っている「惜別」の方は感心しない。魯迅に見えないし、写真の裏に惜別、ていうのも感動しない。
人間失格:哀しい。自分の手記にしか読めないけど、自分の性格をこういう風に把握してしまうのは哀しいと思う。自分を傷つけることによってのみ完全な作品を書けるのだとしたら、それはとても哀しい。
狂言の神:これも哀しい。書くことによって生き通したんだね。それは読者にわかってもらうためなんかではなく、書きたかったからでもなく、書くしかなかったし書かなくちゃいけなかったんだね。
虚構の春:太宰宛ての手紙文で構成されている作品。自分で作った手紙文が相当あると思う。また構成を変えたり一部だけ抽出することで、他人の言葉で自分を捕まえようとしている。
雌について:切ない。情死なんかじゃない。道行でもない。誰も殺してなんかいない。
創世記:侘しい・・・のだと思うが、「侘しい」という感覚がまだ自分にはわからない。何か言いたいことがあるんだと思う。も少し経ってから読んでみなくちゃ。(もう十分経ったので読んでみなくちゃ・・)
喝采:わかんないよう・・・(何がわからなかったのか?これも読んでみなくちゃ)
二十世紀旗手:うますぎて感想がかけません。「それこそは世の中」「もいちど信じてだまって持たせてくれたなら」「一万五千円の学費使って学問してそうしておぼえたものは」「ああ、あざむけ、あざむけ」「しだいに哀しく、たそがれの部屋の隅で」と、気に入った文章を抜き書きしてある
HumanLost: これも書けない
トカトントン:うますぎ。「トカトントン」という響きもぴったり。これ「ポカポンポン」じゃ笑っちゃうし、「ドカドンドン」も違うよね。計算しつくされた作品だと思う。
苦悩の年間:抜群だ。プロレタリアの科学的ひがみ、うまい!「そしてやはり歴史は繰り返すのだろうか。私は歴史は繰り返してはならぬものだと思っている。」 大人だ!
思い出:後年の作品と内容は似ているが訴えるものが少ない
魚服記:秀作。描写が目に見えるようだ。
列車:まだるっこしい。ありそう。
地球図:割とつまんない。
猿が島:「ああ、この誘惑は真実に似ている。或いは真実かもしれぬ---否!」
道化の華:グサグサと心に刺さる。「ここを過ぎて悲しみの市」
猿面冠者:「あああ。あなた。仕合わせは外から?」
逆行:うまい。特に冒頭。どうしてこれが芥川賞に落ちるのかしら。ラストの遊びたい、の言葉に泣くところも素敵。こんな小説はとても書けない。(当たり前だ)
彼は昔の彼ならず:構想が良い。最後のどんでん返しが読者を見抜いている。
ロマネスク:そうだよね。嘘って増殖するんだよね。「うその三郎のうその火焔はこのへんからその極点に達した」。
ヴィヨンの妻:さっちゃん可哀そうだが、「人非人でもいいじゃないの」と開き直られるヴィヨンもつらいね。こんな目に合わせたいわけでは・・・
桜桃:子供より親が大事、と内心思っていても言わないのが普通だというだけで、愛する能力に欠けているわけではないと思う
玩具:記憶じゃなくて完全創作なんじゃないかと疑いたくなるすごさ。『だるま寒くないか』『寒くない』すごく寒そう。
陰火:よく判らない。裏切られたと思いたくないってこと?
めくら草子:マツ子さんかわいい。どうしてこんな人も気に入らないのだ?「私は、死ぬるとも、巧言令色であらねばならぬ。鉄の原則」。何でなんだろう。「この水や、君の器にしたがうだろう」。27歳でここまで書ければ立派よね。(確かにそうだが17歳に言われたくない)
正義と微笑:面白いとは言わないが素晴らしい。充実しています。「微笑を持って正義を行え」。そうだそうだ!
パンドラの匣:これも明るい話。ラストのどんでん返しが鮮やか。
燈籠:万引きの弁解がいい。ありそう。「変質の左翼少女、滔々と美辞麗句」か。ラストの電球を変える程度のしあわせ、というくだりもうまい。
女生徒:(これ相当好きだったんだけど。タイトルの下は1ページ丸々空けてあるだけ。、何か書こうと思ったらしいが・・・)
雪の夜の話:短編。意地悪なお兄様ですな。作者でしょうか。美しいものとそれ以上の汚いものを見てきた瞳。どんなに汚いものを見てきても、あなたの瞳は美しいと思うよ。
葉桜の魔笛:らしい。女心をよく理解してます。そして葉桜のかげから「軍艦マアチ」が聞こえてくる
秋風記:退廃美と言うか堕ちていくものの美しさと言うか、文の間からこぼれてしまう。「ところが、私、自由じゃない。両方とも」。うまい。
新樹の言葉:この「りんとして美しかった」兄弟は爽やかで素敵。私もこうありたい。力こぶを入れて応援する気持ちはわかる。しかし激情を醜悪に感じる必要はない。激情もまたよし・・・
愛と美について:楽しい。うまいし。5人兄弟のそれぞれ性格描写が楽しいが、ラストのイプセン先生のくだり、『おや、家の門のところに、フロック着たへんなおじいさん立っています』。お母さんてば、お茶目。
ろまん燈籠:上とおなじような形式。兄弟の恋愛論が爽やか。
女の決闘:うまい!想像力と表現力と観察力。素材を120%使う構成力と言ったら!ベースは鴎外の訳本。鴎外が好きだったのかね?ちょっと意外。
古典風:何が古典風なのか判らないが、ラストの1行、皮肉が効いています。
待つ:たったの3ページ!すごすぎる!!冒頭から惹きつけますが、終わり方もうまい。人は皆何かを待っていると思う。そして誰かに待っていてほしいと思っている。しかしうまい。(本作品がAJの一番のお気に入りです)
新ハムレット:現代版ハムレット。シェークスピアのは勧善懲悪単純だもんね。このハムレットやオフェーリヤは現実にいそうと思う。現実的でよいと思うが趣味ではないな。
乞食学生:構成が○。最後の方の麗しき幸福とそれをコロッとひっくり返すところ。
富岳百景:よく引用される「富士には月見草がよく似合う」。なかなか思いつきませんよ。桜とか菊とか華やかなものに行ってしまうところを月見草なんだもんな。うまいよね。でも一番気に入った個所は、写真を頼まれて「ただ富士山だけをレンズいっぱいにキャッチして、富士山、さようなら、お世話になりました、パチリ」。これ気持ちわかるー。
懶情の歌留多:エッセイ風。「に」に佐藤春夫が出てくる。「けれども某夜、君は不幸な男だね、と普通の音声でいっていた人、佐藤春夫である」。いいよね。文学を好きなので長生きして、カラマゾフ兄弟のようなのを書けるようになりたい、って書いてあるのに。何で自殺なんかしたんだよう。
八十八夜:この「一寸先は闇」いいなぁ。うまいよね。新しい言葉じゃないのに、切実にひとことで言い表している。私には自分の言葉がない、としみじみ思う・・・
畜犬談:おもしろーい。犬を憎み、犬を愛する不思議な気持ち。犬に媚を売ってしまう面白さ。
おしゃれ童子:前半はかわいい。後半は哀しい。感情は断ち切れても感覚を断ち切るのはむずかしいだろうなぁ。
俗天使:いいなぁ。こんな女の子になりたいが、もう年を取らないというわけにもいかないし。(女子高生らしい感想だ)
駈込み訴え:名作。そうだね。ユダはイエス様を誰よりも大好きだったから、受け入れてもらえなくて裏切ってしまったんだね。きっとそうだ、と思える。
東京八景:うまい。でも時々つらい。
老ハイデルベルヒ:なんでこれがアルトハイデルベルク?もう1回行くと変わってるから?ケイティーはどこにいった?
ダスゲマイネ:可哀そうな菊ちゃん。『僕は菊ちゃんだけを好きなんだ。誰もみんな嫌いです』。なかなかこうは言えないんだね。誰をも愛せない、着飾った苺の苦しみ。
満願:短いけどすがすがしい。白いパラソルをくるくると廻す奥さん。カワイイ。なんだかマネしたくなる。
シリーズの最後に、「修治君」への感謝の言葉と一緒に、ルソォの懺悔録もそのうちちゃんと読むから、と書いてある。が、読んでない・・・読みます、すみません・・・
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