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2019年7月31日

ゼロ年代の50冊(10) 最終回

やっとハードカバー20冊のファーブル昆虫記が読み終わり、当初の予定通り7月に完了の運びとなりました。やれやれ。

(46) 完訳ファーブル昆虫記(ファーブル/集英社):前にも書いたけど「読み直す1冊」で昆虫記を読んだんだよ。文庫本で10冊。「ファーブル先生が提起した疑問に答えた最新訳が欲しいね。虫の写真はイラナイ。みていて気持ち悪くなるので」と書いたのが2015年。その時はこの完訳は既にあったのだ。文庫本じゃなかっただけで。最初からこっちを読めばよかったよ、ぶつぶつ。提起された疑問は勿論、ファーブル先生の間違いも最新状況の補足註満載。虫の写真はカラーグラビアが冒頭にちょっとだけで、素人目にわかりやすい説明図が補足欄に満載。それも虫ばかりではなく、植物も器具も建築物もお洋服や食べ物まで。助かる―!!これ電子版で最新情報を保てるようにすれば完璧だと思う。感動的にいい本だ。が・・・完訳だから仕方ないのだがハードカバーで20冊もあるんだよ。なかなか買えないよ。ま、そんな時の図書館だし、これからは電子でシェアだよな。とにかく良い本なので、虫好きさんは迷わずご購入を!

(47) 神は妄想である(リチャード・ドーキンス/早川書房):キリスト教は言ってることが矛盾しすぎ、宗教なんてない方がイイ!と攻撃するドーキンス。私は、神は妄想でも殆どの人類には宗教が必要なんだろうなぁと漫然と思っていました。日本には宗教がないからダメなのかなとか。でも言われてみるとメリットよりもデメリットの方が大きい気がしてきた。そこまで目の敵にしなくてもとも思うが、日本とは全然状況違うんだろうな。特にアメリカ。あっけらかんと無神論な日本が世界のリーダーな国になれてたら良かったのにって、諦めるのはまだ早いか(笑)。子供の「見えないお友達」が神様のベース説には心から賛成。

(48) 廣松渉 近代の超克(小林敏明/講談社学術文庫):廣松渉という思想家の解説。「昭和精神史」で少しは齧ったんだけど・・背景がわかってないと結構厳しい。何と何がどう違うんだかこんがらかるばかり。でも哲学にも相対性理論というくだりは面白かった。確かに「我」って実体は相対的だったりするもんね。相対的だと考えても何も解決になってない気もするけど(笑)

(49) <帝国>(アントニオ・ネグリ/以文社):これ面白かった。帝国主義ではなく<帝国>という概念。サーヴィス産業を主力とする新しい<帝国>の出現。システムが強力なら、それを打ち破る勢力はより強力になる。戻っているようにみえてもそんな解はない。確かに新しい<帝国>は現実だと思うけど、この先に何が?マルチチュードねぇ。MeToo的なもの?みんなが直接に繋がる、中心のない、でも集中的に管理されている世界。ううむ。哲学というか思想は時代背景があるので、現代には現代の思想が必要だということは理解した。
確かに<帝国>は進み過ぎた資本主義というか拝金主義なんだよな、考えてみると。なんでもお金に換算しすぎだもの。AIの登場でお金を稼ぐのが人間じゃなくなると、「価値」はお金じゃ無くなることが出来るのかもしれない。「いいね!」的なものがお金に代わる価値になるのかも。それは格付け会社とか国家とかAIとかが付ける点数じゃなくて、ちょいと出会った/すれ違った人が匿名で「リアルいいね!」出来る感じ。例えば現在のお店では上客=たくさん買う客なんだけど、そうじゃなくて、感じが良くてまた来て欲しい客に、店員がレジでこっそり「いいね!」出来るみたいなシステム。誰からも「いいね!」が集まる人は、社会的に優遇/尊敬され、子供はああいう大人になりたいと思う。お金持ちじゃなくて。少しずつでもそういう世界になるんだったらいいなぁ。

(50) 帝国以後(エマニュエル・トッド/藤原書店):<帝国>以後の話かと思いきや、こっちの方が話が古かった。1990年代がメイン。アメリカ帝国崩壊の予感をヨーロッパの視点から。確かにアメリカの弱いもの虐めぶりはその後も過激化しており、世界の駄々っ子になりつつある。だがしかしユーラシアが答えにはならない気がする。英国はユーロ参加どころかEU離脱するし。<帝国>の方が気になるな。でも中短期的には米国依存はリスキーだとしみじみ理解。危ないぜ日本。

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