セロトニンという名前は、serum(血清)とtone(調整する)に由来する。血清の中に血管を収縮させる物質を見つけたので、その物質につけた。
実際には、血管を収縮させる働きがないわけじゃないけど、でも弱い。レニン-アンジオテンシン系の華やかな成功に比べると、全然、なのである。
ところが。
呼吸器や循環器への適用を期待して始めたのに、見つかったのがLSDだった。
LSDって若い人は知らないかもね、「サイケ」という言葉ともに死語になってるかも。
視覚的と言われる幻覚と多幸感をもたらす魔法の薬、LSDは、セロトニンと一部の化学構造がとてもよく似ている。 中枢神経のセロトニン受容体に、セロトニンの代わりにくっついてしまうために、幻覚が起きると考えられている。
するとセロトニンって何者!?
まだよくわからない、のが正直なところだと思う。脳の働きはヒトに特化している部分が結構あるし、健常人相手に出来る実験はとても限られる。
わかっているのは、セロトニン神経(=セロトニンを神経伝達物質として使っている神経。セロトニンの化学物質名から5-HT神経とも)は、眼が覚めている時ずっと活動状態にあって(=セロトニンが分泌されている)、寝てるときは低調、REM睡眠(深い睡眠)では寝ている、ということ。
どうも精神活動に関係が深そうだ。だったらこの神経系をどうにかすると、精神病の症状が改善されたり・・・したのである。
そりゃあそうだろう、と思うかもしれないけど、当時は精神症状は肉体とは別、と思われていて、えーと、ソフトバグはハード交換じゃ治らないだろ、的に考えられていたのだ。ところが、「幸せな気持ち」も、ハード操作で作り出せることが分かった。これはびっくり。
以前、気まぐれ読書メモで、ハクスリーの「素晴らしい新世界」について書いた。ハクスリー自身もLSDの経験者で、政府支給の幸せになれる夢の錠剤ソーマはLSDを下敷きに書いたと思われる。
今はLSDはそこまで安全じゃないし(でもたいていの薬よりは安全だったりして(笑))、何より十分に安くないので、規制の対象になっている。でもこれが十分に安くなったら。政府が無料支給したら。
案外戦争も殺人もなくなって、素晴らしい新世界が出来ちゃうのかもしれない。それが本当に素晴らしいことなのかは、とても悩ましいことなんだけどさ。。。
話が逸れた。
とにかく、セロトニン神経が「正常に」動作していることが、「精神的に正常な」状態にある、と考えることが出来そうだ(まだ断言できる状態にないけど)。
とりあえず、セロトニン神経の「正常な動き」を助けることで、「精神的に正常じゃない」状態を「正常な状態」に近づけることができる、ってことで、次回はようやく抗うつ剤について。
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