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2016年8月21日

高血圧の薬(6)βブロッカー

βブロッカーを「高血圧の薬」と呼ぶかどうかは微妙なところだ。前にも書いたように、2016年現在の、高血圧治療薬の第一選択には入っていない。入ってないけど「血圧の薬」として処方されていることは多い。以前は第一選択に入っていたのだ。外れたのは2014年ていうからつい最近だね。効かないから外れたというわけではない。他の薬(カルシウム拮抗薬や、ARB、ACE)の方が効くということになったのだ。他の薬の方が効くのに、なんでβブロッカーが未だに処方されるのか?それはこっちの方が有効なケースもたくさんあるから、ってことだね。

β受容体にも3種類あると前回書いたけど、血圧のお薬として考えるときに注目するのはβ1受容体だ。β1受容体は主に心臓にあって、ここにアドレナリン(の類)がやってくると、心臓を力強く拍動させて、全身に血液=酸素を配って、いくぞ!ファイトいっぱーつ!に備えるのだった。
従って、β1受容体をブロックすると、アドレナリンがやってきても、心臓のドキドキはそんなに強くならず、血液が力強く押し出される=血圧が高くなることが予防できる。心臓が働きすぎて血圧が高くなってしまう病気(頻脈とか心不全とか)による高血圧には、βブロッカーを積極的に使うことになっている。心臓の働きを抑えることを「心保護作用」と表現する。抑えるのを保護っていまいちわかりにくいのだが、過労にならないようにする、ってことだね。

β2受容体は、気管支拡張や糖代謝の活性化を担っている。血管拡張の作用もある。降圧剤という観点ではβ2をブロックしてしまうと血管拡張が邪魔されてしまうし、気管支系の病気・糖尿病の悪化も考えられるから、β1だけをブロックするのがいい。
・・・だったらβ1ブロッカーだけがあればいいと思うんだけど、β1非選択性(β2もβ3もブロックしてしまう)という薬剤も存在するんだよなー。なんでかなー?どういう場合はこっちを選ぶんだろ?


もうひとつβブロッカーの分類には「ISA」という基準がある。内因性交感刺激作用=Intrinsic Sympathomimetic Activity。交感神経を刺激する作用ってこと。
・・・あれ?交感神経をブロックするための薬に、交感神経を刺激する作用があるってどゆこと?て思いますよね。でもそういうものなんだよ。もう少し詳しく書くと、アドレナリン(の類)が来た時には、ちゃんとブロッカーとして働くんだけど、来ない時には自らが刺激作用を持ってしまう。アドレナリン(の類)自体もこういう作用の仕方をする。ブロックしたいからお薬を飲むのであって、こんな作用はない方がいい。
・・・だったらISA-の薬だけがあればいいと思うんだけど、ISA+の薬剤も存在するんだよなー。なんでかなー?どういう場合はそっちを選ぶんだろ?

ま、とにかく、よく使われるβブロッカーは、β1選択性があって、ISA-のもの、というのが当方の理解です。具体的な例としては、アテノロール(テノーミン)、ビソプロロール(メインテート)。βブロッカーはみんな成分名が「ロール」で終わる。

心臓の働きを抑制するので、徐脈の場合はダメだし、β1選択性の薬でも少しはβ2をブロックしてしまうので、喘息持ちにも禁忌。

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