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2014年7月13日

抗菌薬と抗真菌薬

抗生物質ってわかりにくい言葉だと先週書いた。だから抗菌薬と言う言葉を使う、と。

でも実は、この「抗菌薬」がまた、輪をかけて誤解を招く言葉なのだった(笑)。

業界には「抗菌薬」と「抗真菌薬」という言葉があります。

通常考えると、「菌」の一種に、いかにもそれらしい「真菌」というものがあって、「真菌」にだけ効くのが「抗真菌薬」で、それらしいのにもそれらしくないのにも全部に効くのが「抗菌薬」って思うじゃない?

でも業界用語としては通常、真菌に効くのが抗真菌薬、細菌に効くのが抗菌薬、なのです。

わかりにくいその1:菌類の中の、いかにも菌らしいものが真菌というのは正しいんだけど、真菌=キノコやカビ、って推測する人はあまりいないのではないか。
菌類(正確には菌界)の学名(ラテン名)はRegnum Fungi。イタリア語ではキノコはFungiなので、学名的にはキノコと言う意味なのだな。そして「菌」と言う言葉も、元々はキノコと言う意味だったそうだ。今でも訓読みは「きのこ」(知らなかった!)。中国語辞典で「菌」を見てみると、鍋料理の名前も出てくるから、現代中国語でも「きのこ」と言う意味が残っているらしい。
キノコ(ていうかカビ)が原因の病気ってそう多くなくて、抗真菌薬のメジャーどころは水虫薬。

わかりにくいその2:顕微鏡が発明されて、今まで見えなかったものが見えるようになった。そいつらはキノコやカビとは大分違うものだったので、欧米人はバクテリアという新しい名前を付けた。そして、バクテリアの訳語として「細菌」ていう名前を付けちゃったんだよなー。

もしかしたら当時はちっちゃいのは全部「菌」でわかりやすかったのかもしれない。でも今となっては「菌界」の中には細菌=バクテリアは含まれないのだよ。「抗菌薬」が対象とする病原菌(ブドウ球菌、サルモネラ菌、大腸菌、結核菌、コレラ菌・・・)は、分類上の「菌」ではないのだった。

わかりにくいその3:これに懲りたのか、更に小さい「ウィルス」に対しては、微細菌とか和名を付けずに、そのまま「ウィルス」と呼ぶようにした。従って、「抗菌薬」は、業界一般的には「抗ウィルス薬」は含まない。ウィルスに関してはグローバルな対応になっているのだった。

業界用語もだけど、みんなの認識もたぶん、「菌」=細菌だよね。

「細菌」って名前を付けなければ良かったのになぁ。そしたら「菌」=キノコやカビ、という概念が残っていたのかもしれないのに。訳語って難しいよなぁ、としみじみ思うのだった。

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