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2014年7月7日

抗生物質

抗生物質ってわかりにくい言葉だと昔から思っていたのだった。そう思うのは私だけではないようで、専門書の類ではあまり抗生物質と言う言葉は使われなくなっています。

抗生物質(anti-biotics)とは何か。読んで字の通り、生きるのを邪魔する物質。
二種類の菌を一緒に置くと、自分が生き残るために相手の菌の増殖を阻害する物質を出すことがある、という生物学上の発見から付けられた。だからこの時点では、菌じゃなくてもこういうことあるかもね、位の気持ちでネーミングしたのではないか。学術用語だったのだ。

ところが、アオカビが作った抗生物質であるペニシリンが、劇的に流行り病に効くことがわかり、「抗生物質」と言う言葉と共に急速に広まっていく。この時点で既に、単に「生きるのを邪魔する」のではなく、「細菌が」生きるのを邪魔する物質(=人間とか他の動物が生きるのは邪魔しない)だから薬として使えることが実証されていたのに、「抗細菌薬(anti-bacterial drug)」ではなく「抗生物質」という名前で広まっちゃったのが不運だったよな。日本語だけの問題ではないようで、wikiのどこの言語でも似たような注釈が書いてある。でも中国語(北京語)はすんなり「抗細菌薬」。わかりやすくていいなぁ。

その後、研究が進んで、細菌製のものを真似した合成抗生物質も出来た。
抗生物質の邪魔の仕方から、ウィルスには無理と思われてたけど、全く別の邪魔の仕方による抗ウィルス薬もできた。
更に、生きるのを邪魔すると言う意味では人間の癌細胞の増殖を邪魔するお薬もできた。
これらは抗生物質か? うーん。そうのような違うような。解釈によって異なるのだった(笑)。

一般に抗生物質というと、抗細菌薬です。合成かどうかは問わない。抗ウィルス薬は含まないことが多い。
私自身は、抗細菌薬も抗ウィルス薬も含めて、飲み薬は「抗生物質」と呼ぶことにしてます。一時期は「抗菌薬」って呼んでたんだけど、すると抗生物質はないのか?と聞かれることがあってさ。抗生物質=良く効く薬、と理解している人が多いのだよな。「抗生」って何?とは皆さん思わないらしい。
外用薬の方は「抗菌薬」と呼んで、「どちらも細菌の増殖を抑えるお薬ですね」と説明する。抗生物質と抗菌薬はどう違うのか?と聞かれたことはない。なんでかなー。

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