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2013年6月18日

「読み直す1冊」シリーズ(4)

冬から春にかけて入院騒ぎでバタバタしたせいで、読書が進まなかったのだが、ここにきてがんがん読んでいます。江戸時代から5冊。

(16) おくのほそ道(松尾芭蕉:角川ソフィア文庫ビギナーズクラシック):紀行文ということになっているが、句集或いは歌枕ガイドブックの趣が強い。前に読んだ西行の跡を追っているところもある。題名から道の奥=陸奥に行ったんだと思ってたけど、そんなに奥まで行ってないのね。シナリオありの旅行番組みたいで、この歌もほんとは江戸から用意していったんでないの、と邪推してしまう私なのだった。

(17) 蕪村句集(与謝蕪村/玉城司:角川ソフィア文庫):芭蕉と蕪村は並び立つライバルだと思ってたんだけど、蕪村の方が少し後の時代で、蕪村は芭蕉をとても尊敬していたのね。選んだ句にもよるだろうけど、芭蕉より「俳諧」な感じ。一茶は俳諧ぽいと知っていたけど、蕪村も相当俳諧調。これって関西人ノリだよなーと思える句が多く、一気に親しみが増してしまいました。あとね、凧を「いか」として詠んだ句があったぞ。ほんとにイカって呼んでたんだー、と感激。

(18) 東西遊記(橘南谿/宗政五十緒:東洋文庫):これ面白い!! 医者である著者が、各地の薬草や風土病を探るついでに行った場所や経験したことについて書いたもの。各地の名所がタイトルになってガイドブック風なのだが、おくのほそ道よりも、こっちの方が遥かに紀行文になっています。青森から鹿児島まで津々浦々「みちのおく」まで廻っていてスゴイ。当時の人も相当感心しながら読んだと思う。一番気に入ったのは、地元の人に「鬼に食われるからこの先は行っちゃダメだ」と止められても、その鬼って赤鬼か青鬼か、ふんどししてるのかとバカにしてたのが、そんなんじゃなくて大きい犬みたいなもの、と言われて、それってオオカミ!と急に怖がる話。ありそう。
また去年行った広島について私は、「広島市が脚光を浴びるのは、明治になってから」と書いてたけど、この本には「其繁華美麗なる事、大坂より西にては並ぶものなし」と書いてあるではないの。失礼しました。道の真っ直ぐさ加減についても、「平相国(=清盛)の手なるべし」とのこと。びっくりだー。クマがいないのに熊本県、と思ってたけど江戸時代には熊が名産だったこともわかる。いやー勉強になること!これ今は絶版なんだけど、最新補足リンク付きデジタルブックで読みたい!頼んだぞAmazon!

(19) 曽根崎心中 (近松門左衛門/祐田善雄:岩波文庫):浄瑠璃の台本の形になったものを読んだので、最初は読み方がわからず難儀した。心中もの選集になってたんだけど、心中成就するものも失敗するものもあり。これって当時のドキュメンタリーだったんだね。大阪の街に詳しい人の方が楽しめます。こうしてみると大阪の街名ってちゃんと残っててえらいなー。浄瑠璃も一度見てみたくなった。

(20) 雨月物語(上田秋成/高田衛:ちくま学芸文庫):これもなかなか面白かった。短編集なのに止まらなくなって、電車を降りてマックでコーヒー飲みながら最後まで一気に読んだ。古典で止まらなくなるのは久しぶり。素材もいいけどとにかくプロットと語り口が上手。どうなるのどうなるのこれ、と引き込まれてしまう。近代小説の原点は多分この辺にあるのだろうね。内容としては怪談の類。今昔物語と似ているものもある。中国起源のもあるのだそうだ。

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