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2020年8月7日

Guardian’s 1000 (19)

梅雨は明けたが今度は暑さが続いてやっぱり外に出たくない。自粛依頼もあるしね。というわけで、読書は相変わらずさくさく続く今日この頃。

(181) 評決のとき(ジョン・グリシャム/新潮文庫):
グリシャムはいくつか読んでるんだけどベスト千に入った2冊はどちらも初読。これは処女作だけどなかなか売れなかったそうで。面白いとは思うけど、裁判以外でも人が死に過ぎだと思うし、最終的に無罪なるのもちょっと・・・ま、アメリカらしいとも言うんだけど。AJのおススメはやっぱり「依頼人」だな。

(182) 甘い薬害(ジョン・グリシャム/アカデミー出版):
原題King of TortsのTortsは法律用語で不法行為という意味なんだけど、邦題はどこから来たんだろ?tortがtart(タルト)に似てるのか?意図不明。
集団訴訟のデメリットが良くわかる。甘ちゃん弁護士がその道のプロに見込まれ薬害集団訴訟を手掛けて一躍時の人+大金持ちになるが、すぐに転落。得た全てを失うが、恋人は戻ってくるし初心も少し取り返せてグリシャムらしい結末。でもなんでこれかなー、もっと他にも作品あるのに。

(183) ミザリー(S・キング/文春文庫):
S・キングは私にとって「怖い映画の原作者」。私は怖い映画は苦手で見ないのだが、テレビでうっかり見始めたら怖い番組だったということがままある。大抵は気づいた時点でチャンネルを変えるのだが、怖いとわかっても気になって途中で止められないのがS・キング原作のスリラー。映画ミザリーは見てないが、これもうっかり見たらやめられなそう。読書もノンストップで最後まで読んでしまいました。怖かった・・・。自動車事故で大怪我をした作家ポールを助けてくれたのが熱烈なファンのアニー。ところが救急車を呼ぶでもなく、監禁されて終わらせた筈の自作の話を書く羽目になり、熱烈なだけじゃなく何人も人を殺しているとわかってきて・・・怖い。どうなるの?どうするの?どうしよう。最後は軟着陸。キングっていつもそうのような気がする。しかし一番ええっ!と思ったのは、スティーヴン・キングをStephenと綴ること。これでスティーヴンと読めるのか?不思議。

(184) ドロレス・クレイボーン(S・キング/文春文庫):
こちらは怖くなかった。普通の犯罪小説。ろくでなしの夫を持ったドロレスは、日蝕の日に殺害に成功。疑われつつも無理もないよねと事故死で決着する。それから何十年もたち、殺意を知っていた勤め先の奥様ヴェラを殺害した容疑がかけられる。前は殺したけど今度は違うよ!と洗いざらいを告白するドロレス。ヴェラの方はわからないけど、ろくでなしを家族が殺してしまい、でも事故死で済んでしまうケースって案外あるんだろうな、って気がする。

(185) 血と暴力の国(コ―マック・マッカーシー/扶桑社):
暗い。偶然大金をネコババした小悪人のモスは、殺人鬼のシュガー(砂糖ではない)に追われる羽目になる。追う保安官のベルにも実は背負う過去がある。しかしシュガーが極悪非道すぎ。ほとんどスプラッタ状態で救いも何も。スカッとするところもない。唯一笑えたのは、訳者あとがきで、描かれた時代(1980年)にポケットに入る携帯電話はまだないんだけど、質問しても作者から返事来ないのでこのまま訳しました、と書いてあったこと。そうそう、なんだかずっと前からあった気がしてしまうよねーと思った。

(186) エデンの東(スタインベック/ハヤカワepi文庫):
ジェームス・ディーンの映画で有名。読むのは初めて。ディーンの役どころ(キャル)はこんな感じだったのだが、こんな人いたっけ??と思ったのが中国人のリー。解説読んだらやっぱり映画にはいなかった。こんなに魅力的なキャラクターを削除するなんてひどい話だよ。大雑把な筋はカインとアベル。確かにオリジナル(聖書)は何を言いたいのか不明だが、こういう兄弟はあるだろうと思える。解説にもあるけど、悪女のキャシーが今一つ薄っぺらいのが残念だ。人格障害はありうる話だが、それで終わらせるのもどうか。改心しなくていいけど、もう少し逡巡はあってもいいのではなかったか。

(187) ヘビトンボの季節に自殺した五人姉妹(ジェフリー・ユージェニデス/ハヤカワepi文庫):
僕らの憧れ美しい5人姉妹。末っ子が自殺してから1年後に残り4人も心中。理由は不明。恋或いは愛が原因かもしれないけど、そうとも言えない。少し怪談気味。State of the Nationではないかもだけど中部アメリカっぽい。Loveではない気がする。原題はThe Virgin Suicidesで素直なのに邦題はヘビトンボに注目しすぎかなぁ。これはこれで不気味な要素なんだけど。

(188) ザ・ロード(コ―マック・マッカーシー/ハヤカワepi文庫):
荒廃した世界を南へとさすらう父子。襲ってくるのはゾンビや野犬ではなく、同じくさすらう人々。絶望のサバイバル。現実世界もある意味でこうだったりするけど、明日という夢や希望があるかどうかで全然違うよな。それでも善き人は火を運ばなくてはならない。うむ。最後に小さく救いがあるのがAJ好み。

(189) すべての美しい馬(コ―マック・マッカーシー/ハヤカワepi文庫):
16歳のジョン・グレイディは親友と共に愛馬と共にメキシコへ。途中で良馬を連れた別の少年と道連れになるが、雷を恐れて馬も何もなくしてしまう。次の街で馬を見つけた少年を置いて旅を続け、馬牧場に就職。力量を認められお嬢さんと恋仲になって順風満帆と思いきや、恋がバレて馬を取り返そうとした殺人犯の連れとして警察にチクられ刑務所行き。殺人犯は処刑されてしまうが、ジョン・グレイディと親友は結局釈放される。親友はこの時点でアメリカに帰るが、ジョン・グレイディは元の職場へ。彼女の祖母が絶縁を条件に助けてくれたことを知る。絶縁しないもん!と駆け落ちをせまるがお嬢さんは応じない。自棄のヤンパチ、警察署長を人質に自分達の馬を取り戻し、アメリカに帰る。帰っても自分の居場所はなく、どうしようかなーと終わる。現代版ハックルベリー・フィンの冒険、と後書きに書いてある。そうか、私はビルディングス・ロマンってやつに興味ないんだな。それでこのジャンルは点が辛いのかも。

(190) ブラッド・メリディアン--或いは西部の夕陽の赤(コ―マック・マッカーシー/ハヤカワepi文庫):
19世紀半ば、グラントン大尉のインディアン討伐軍に参加してメキシコに向かう少年。実話ベースのフィクション。相変わらず暗いしスプラッタすぎる。曲者のホールデン判事が魅力的で怖い。最後まで生き残り楽しく生きているらしい判事。人間は遊ぶために生きる、は頷けるが、賭けるものが大きい遊戯程魅力的->一番大きいものを賭けるのが戦争だから、戦争は必然って。そうかも、と思わせるところが怖すぎる。討伐隊はインディアンを殺して頭皮を剥ぐ。頭皮の数だけお上から懸賞金をもらえるから。女子供はもちろん、友好的なインディアンも殺しちゃうし、肌の色がいているメキシコ人も殺しちゃうし、ついでに懸賞金対象外の人も殺したりひどい目に合わせたり。結局英雄は追われる立場になる。そりゃそうだ。スプラッタ過ぎてAJの好みではないのだが、アメリカ(メキシコも)こんなことしてたのか、と言う勉強として、読んだ方がいいかなとも思う。

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