ページ

2014年10月26日

痛みどめ(1)

痛みどめと言ったら、アスピリン/バファリン(バッファード・アスピリン)が代表選手と思う人が多いのではないか。今では副作用のためにほぼ処方されなくて、同じような別の薬が使われることが多いんだけどさ。

アスピリンの類の薬をギョーカイ的には、「解熱鎮痛消炎剤」と言います。またの名を、NSAIDs(Non Steroidal Anti-Inflammatory Drungs)=非ステロイド性抗炎症薬。ステロイドは強力な抗炎症薬なんだけど(その話は別途)、ステロイドじゃないのに炎症を抑えることができる薬、という意味。

あれ?前回、炎症自体は免疫反応で悪いことじゃない、って言ってなかったか?
そうなんですよ。そうなんだけどね。

炎症は炎症を呼ぶところがあって、延焼(誤変換じゃなくてダジャレ)は防いだ方が早く良くなることもあるのだった。とはいえ、免疫反応としては、付近一帯延焼しちゃった方が、外敵を殲滅できる気もするわけで。賛否両論ではあります。

「何か敵(のようなもの)が入ってきた/組織が壊れちゃった!という警報が鳴る」と前回書いた。より正確には警報は複数ある。そのうちのブラジキニンという伝達物質が痛みを伝達する。痛みは脳まで届いて初めて「痛み」として感じられる。
さて警報が鳴っている状況では、細胞にあるリン脂質からプロスタグランジンという伝達物質も作られる。プロスタグランジンは、末梢血管を拡げて炎症を起こすとともに、ブラジキニンの作用を増強=痛みを強く感じさせ、体温調節している神経系に働いて、「平熱」をいつもより高い設定に変えてしまう=発熱させる。

アスピリンの類は、リン脂質からプロスタグランジンを作る仕組み(COX:シクロオキシナーゼ)を阻害する。プロスタグランジンが作られにくくなると、熱も下がって/痛みも鎮まって/炎症もおさえられるのだった。(ちなみに、高く設定された仮の「平熱」が元に戻るだけで、本来の平熱よりも下がることはありません。念のため)

が。プロスタグランジンは他にもいろんな働きをしていて、特に胃では胃粘膜を胃酸から守る働きをしている。従ってNSAIDsを飲んでプロスタグランジンが減る=胃粘膜が弱って胃酸にやられる、のは基本的にこの薬の宿命。多くの場合、胃薬が一緒に処方されるのはそういうわけなのだった。(炎症状況下で働くCOX-2だけを阻害する一部のNSAIDsなら大丈夫)


また、COXを阻害してしまうと、プロスタグランジンから作られるトロンボキナーゼも減る=血が止まりにくくなる、COXの代わりにLOXが頑張るのでロイコトリエンが増える=喘息になる、等の副作用もある。

バファリン(アスピリン)以外の代表的なお薬の名前を上げると、
・ポンタール(メフェナム酸):鎮痛作用が強いのか、歯医者さんで人気
・ロキソニン(ロキソプロフェン):処方率ナンバーワンだと思う。第一類医薬品
・ブルフェン(イブプロフェン):私が学生の頃は人気だったのにな。第二類医薬品
・ボルタレン(ジクロフェナクナトリウム):これ内服もあるけどむしろ湿布薬として有名かな
・インテバン(インドメタシン):同上
・セレコックス(セレコキシブ):COX-2選択阻害

書いてみて思いだしたけど、NSAIDsは湿布薬としても使う。湿布だとその辺にしか効かないから副作用は少ない(主作用も少ない)。

 ****

副作用があっていやだし、炎症は免疫反応なんだから抑えなくていいので、痛みだけ抑えられるお薬はないのか?→あるよ。副作用はどっちみちあるけどね。次回は炎症作用がない方の鎮痛解熱剤を取り上げる予定。

0 件のコメント: