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2019年11月11日

光文社古典新訳シリーズ(22)

1か月に2タイトルでほぼ予定通りに進んでいる光文社古典新訳。今回のおススメはリラダン!

(211) 未来のイヴ(ヴィリエ・ド・リラダン):理想の恋人アンドロイドを開発するエジソン。100年以上前の本とは思えません。技術的な話はともかく、恋とは何なのか、を考えさせられる。恋は相手が必要ではあるけど結局一人のものだから、アンドロイド相手でも成立はすると思う。だが、理想の恋人が相手だから理想の恋なのかっていうと、それはどうかなぁ・・・これは案外喫緊の課題だったりなんかして。ギョーカイ人必読!

(212) 鏡の前のチェス盤(ポンテンベッリ):鏡の向こうの世界を白の王様と散歩する。設定はアリスに似ているけど中身はだいぶ違う。ファンタジーではあるが不条理ていうか。「マネキン」は「トルソー」の方がいいような気がする。キリコ的な乾いた明るさ?イタリア的なのかなぁ?

(213) 脂肪の塊/ロンドリ姉妹(モーパッサン):フランス風味の短編集。「女の一生」よりもこっちの方が好きだな。「脂肪の塊」って本当はふっくらグラマーカワイ子ちゃんの意味合いなのだそうだ。娼婦の塊ちゃんがセクハラ(パワハラ?)を受ける話。ロンドリ姉妹はイタリアっぽいしフランスぽい。

(214) ナルニア国物語(C・S・ルイス):面白いとは思うのだが。子供の頃に読んだけどたぶん1回読んだきり。たぶんなんだか説教臭く感じたのかなぁ。今読んでみると明らかにキリスト教臭が強い。異教の神タシュは正反対の存在と言う割には、異教徒でも正しい行いをするものはアスランの信者である、と読みようによっては心が広い牽強付会。背景を深く考えない子供時代に読むべき冒険物語。食べ物の記述が多いのは嬉しいけどね。

(215) 傾城の恋/封鎖(張愛玲):日本占領下の上海と香港。「傾城の恋」は城を傾ける君主の恋ではなく、城が傾くさなかの恋。「封鎖」はさらに刹那的。戦時中だからの恋はあるよね。返還前の香港の早く早くという加速度を思い出した。

(216) カンタヴィルの幽霊/スフィンクス(ワイルド):カンタヴィルの幽霊がイギリス/アメリカぽくて面白かった。あとは普通かも。ワイルドのお友達による作品付き。

(217) 三つの物語(フローベール):「素朴なひと」「聖ジュリアン伝」「ヘロディアス」の3編。どう繋がるのか?と思ってたら宗教繋がりなんだって。成程。中では「素朴なひと」が好きかな。ジュリアンは最後に神の救いがあるとはいえ運命が過酷すぎる。ヘロディアスがサロメなのはだいぶ進んでから気が付いた。ファム・ファタルはサロメではなくサロメのお母さんだったか。ありそう。「宗教戦争」の原因は、宗教ではなく政治(個人の欲望)という解説に納得。

(218) 八月の光(フォークナー):「響きと怒り」に較べると全然読みやすい。主要人物の背景も時系列じゃないけど語られてるし。あぁそこで繋がるんだ、な場所もあるけど。黒人はキッチリ差別されている時代、真っ白じゃない人(アングロサクソンじゃないスペイン系を含む)は微妙に差別されて生きづらい。白くても未婚の母も生きづらい。全体に暗いが最後は救いもある。やっぱり女は強いってことよ。

(219) 怪談(ラフカディオ・ハーン):読み直す1冊の再読。印象は変わらないけど心持ち訳文ぽくなっているかも。原注が付いているのもイイ。前読んだときはそうかこれ日本語で書かれたんじゃなかったんだったと後で思ったもんな。ハーンはロティを読んで日本に憧れたんだって。びっくり。いろんな読まれ方をするものだ。雪女伝説はこの怪談が元になっている由。さもありなん。

(220) 方丈記(鴨長明):若人の100冊再読。これ訳す意味あるのか?原文でも結構読めるんだけど。原文も載っているし、和歌も付いているし、地図とか解説が充実しているのはありがたい。愚痴っぽいよと前にも書いたけど訳者(蜂飼耳)前書きでもそう書いてあって笑った。達観してるところではなく、達観してない所を読むべきだと。なるほど。

2019年11月9日

Guardian’s 1000(12)

今回はWar and Travel。前の10冊は7割が▼という結果になって自分でも驚いたけど、今回の10冊は▼3冊で普通。中では、イタロ・カルヴィーノの「見えない都市」が気に入りました。

(111) アイスクリーム戦争(ウイリアム・ボイド/早稲田出版):
アイスクリームほぼ出てこない・・・
第一次世界大戦で戦うイギリス軍とドイツ軍@アフリカ植民地。こんなところでも戦争してたのか。巻き込まれて気の毒な現地アフリカ人。軍人一家のらしい兄とらしくない弟。銃後&戦地の恋情。アイスクリームのようにだらだら溶けてしまう戦争に意味があるのか。まぁどんな戦争も意味や価値があるかは疑問なのだが、注目もされず歴史的にも埋もれてしまう戦争にどれほどたくさんの命が直接/間接に損なわれてしまうか考えさせられる。イギリスやドイツのらしい描写も好き。題名はちょっとね。アイスクリーム出て来るかと期待したじゃないかー

(112) 見えない都市(イタロ・カルヴィーノ/河出文庫):
マルコポーロがフビライ帝に語る様々な都市。前半はシュールながらもファンタジーぽいが、だんだん身につまされる話が多くなる。どこでもないけど、どこでもあるような。
前半の「精緻な都市」のシリーズが割と好き。一番好きなのは水廻り施設だけが残る妖精の国アリュメット。都市以外にも語るべきものがあるのでは、と思う反面、都市以外も都市に依存してたりするので、そもそもそういう社会の在り方ってどうよ、ということなのだろうなぁ。いろいろ考えさせられるが、単にファンタジーとしても好き。

(113) 西遊記(呉承恩/岩波文庫):
子供の頃に童話で読んだきりだった。2005年新訳で再読。
童話の原作はもっと有難い(説教臭い/仏教ぽい)ものかと思ってた。全然違う。水滸伝な語り口。ノリは虫プロの孫悟空(悟空の大冒険)で、教訓よりギャグ優先。
そもそも、仏様たちはなんで西域までお経を取りに行かせたいのか、苦労する意味あるのかコンセプトが破綻してるし、聖典がある西域を敬っているようでも中華思想が透けて見える。だいたい文庫本10冊長すぎ。重複してみえるエピソードも多い。章の数に意味を持たせている(数秘術的な)らしいのだが、長すぎなんだよ。これが中国文学代表でいいのか。ぶつぶつ。
実際には玄奘大変だったんだろうし、同時代の人達にはエライ!スゴイ!と思われていたのだろうが、時代を経るに従って、単に面白ければいい物語になってしまったような。いいけど。
英語題名は"Monkey"なのね・・・ま、西方と言われたら西欧だと思っちゃうだろうし、いいけどさ。
新訳は新しすぎる位の訳。注も解説も丁寧で読むならこれをお勧めします。

(114) 誰がために鐘は鳴る(ヘミングウェイ/新潮文庫):
再読。スペイン内戦に介入する国際義勇兵団のアメリカ兵。スペイン娘と初めての恋に落ちるも任務のために命を落とす。悲しい最期。何のための戦いなのか勝って何があるというのか。
「普通のキリスト教徒国」からみるとスペインは独特なのらしい。ピレネー超えるとアフリカってやつ?確かに言語は近くてもなんか精神的に違う感じするよね。アジアの中の日本みたいに?スペインの内戦は第二次世界大戦後もまだ続くのだが、雰囲気をつかむためにも読んでおいた方がいいと思う1冊。

(115) ビルマの日々(ジョージ・オーウェル/晶文社):
イギリス統治下のインドの統治下のビルマで過ごすイギリス人達。現地人との反目や交流。インド人や中国人など「第三国」な人たち。イギリス紳士はどうあるべきか。
常に中途半端なフローリーは恋をしてもうまくいかず、最後は飼い犬を道連れに自殺。あまり戦争でも旅行でもないが反乱はあるな。著者はビルマにいたことがあるそうで、ビルマっぽく書けている、ような気がする。ただし読んで行きたくなるとは思えないけど。

(116) 若き獅子たち(アーウィン・ショウ/ちくま文庫):
ショウは夏服を着た女たちの印象が強かったのだが、最初の長編であるこれはずっと重たい。
第二次世界大戦のドイツ兵とアメリカ兵。戦争なんて関係なかった若者達が戦争に巻き込まれて戦士になっていく。アメリカでも生きづらいユダヤ系。「いかにも」な軍人もいれば有能な軍人もいる。そういう意味ではどこでも一緒かも。しかし生命が軽すぎる。戦争って何なのか、何のための戦争なのか、悩ましい所。後から参戦したお金持ちのアメリカと貧乏なドイツ(もっと貧乏な日本)。パリ解放目前で物語は終わる。希望があるような気のせいだったような。

(117) 戦争と平和(トルストイ/岩波文庫):
若人の100冊で済み。これはベスト千でも納得の1冊。

(118) 80日間世界一周(ヴェルヌ/光文社古典新訳):
これってベスト千なのかね。

(119) 地底旅行(ヴェルヌ/光文社古典新訳):
これは好みではないなー

(120) カンディード(ヴォルテール/光文社古典新訳):
これも好みじゃないなー